欠陥?中国初の空母「遼寧」の性能と搭載機数について

中国
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中国初の空母になるまで

「スクラップ同然の未完成空母を買い、観光用のカジノ船として使う」

こんな奇妙な商談が成立した結果、中国初の空母「遼寧」が誕生しました。

「遼寧」は旧満州にある省の名前ですが、もともとは1988年にウクライナで建造が始まり、ソ連空母「ワリャーグ」になるはずでした。

ところが、ソ連崩壊で建造は止まってしまい、独立したウクライナにおいて、完成率68%のまま放置されます。ウクライナに空母を運用する余裕はなく、スクラップに近い状態まで劣化しました。

その後、カジノ船に改装する契約の下、1998年に中国系の企業が買い取り、中国に回航することになりました。ところが、実際は中国海軍が裏で企業を操り、最初から空母に使うつもりでした。

ただ、未完成の空母といえども、黒海から中国に回航する場合、ボスポラス海峡を通過せねばならず、トルコ側の承諾が必要です。空母のままでは許可が降りず、観光用のカジノ船にしておけば、海峡を通れると謀ったわけです。

その結果、2002年に中国・大連の造船所に着き、約9年もの月日をかけながら、全面的な改修工事が行われました。見た目こそ「ワリャーグ」なれど、その中身は全く違う姿になり、兵装や電子機器はもちろん、基本システムと機関も根こそぎ変えました。

そして、2011年8月には試験航海を行い、2012年9月に「遼寧」として就役します。

艦載機にはJ-15を使用

  • 基本性能:空母「遼寧(CV-16)」
排水量 46,637(基準)
全 長 306.4m
全 幅 74.4m
乗 員 1,960名
速 力 32ノット(時速59km)
航続距離 約7,000km
兵 装 30mm CIWS×3
対空ミサイル×54
艦載機 戦闘機:18〜24機
早期警戒ヘリ×4
哨戒ヘリ×4
救難ヘリ×2
価格 約200億円(購入+改修費)

遼寧では「J-15(殲-15)」を運用していますが、これはロシアのSu-33を参考しながら、中国が新たに開発した艦載機です。

本当はSu-33が欲しかったようですが、ロシア側が輸出を断ったため、再びウクライナから同系統の機体を買い、母艦と同じ手法で開発しました。

このJ-15を18〜24機ほど積み、水平線の向こうを監視する早期警戒ヘリ、対潜水艦用の哨戒ヘリ、救難ヘリと一緒に運用します。コンパクトながらも、それなりの航空戦力を誇り、その脅威は決して無視できません。

一方、アメリカ空母のようなカタパルトは持たず、艦首にあるスキージャンプ台を使う方式のため、艦載機は兵装や燃料を満載できません。

一気に加速させるカタパルトとは違って、スキージャンプ台は艦載機自身の加速力に頼り、航続距離と兵装を含む作戦能力が制約されます。

だからこそ、通常はカタパルト方式を目指すものの、カタパルトは簡単な仕組みに見えて、実際は開発・製造するのが難しく、仮に頑張って国産化しても、信頼性に欠けることが多いです。

練習空母という役割

スキージャンプ台方式の制約、ソ連設計ゆえのシステム統合の困難さ、搭載機数の少なさを受けて、日本では遼寧を「欠陥」として扱い、就役時はバカにする傾向が強かったです。

たしかに遼寧の性能を考えると、アメリカの原子力空母には敵わず、とても正面からは対決できません。

しかし、そもそも遼寧は実戦向けではなく、あくまで練習用の空母にすぎず、多くがその存在意義を見落としています。

つまり、遼寧の真価はその戦闘力ではなく、中国が「空母というものをどう動かすか」を学び、将来の建造・運用につなげる点にありました。

空母の運用手順の確立、艦載機パイロットの養成、打撃群の編成と連携訓練——これらは実際にやってみないと、分からないものばかりです。

練習空母として有益

中国は遼寧で得た知見をふまえて、2019年には初の国産空母「山東」を造り、現在は3隻目の「福建」を就役させたほか、4隻目(原子力空母?)を建造しています。

遼寧の就役から14年で国産空母の建造、空母打撃群の運用にたどり着き、驚異的な速さで能力を広げました。

それは全て「遼寧」から始まり、一部が「欠陥空母」と嘲笑っているうちに、彼らは練習空母で着実に育成しながら、中国の空母運用能力を確立しました。

ここ10年の成長ぶりを考えると、「遼寧」の果たした役割は大きく、中国の空母艦隊の礎を築き、外洋海軍への進化を支えました。

旧日本海軍で例えるならば、空母の先駆けとなった水上機母艦「若宮」、あるいは日本初の空母「鳳翔」に近く、その歴史的意義は計り知れません。

他方、日本の海上自衛隊は「いずも型」を使い、戦後初の軽空母に改修したといえども、こちらも練習的な意味合いが強く、中国側の遼寧と似た位置付けです。

されど、すでに中国が空母打撃群を運用するなか、海自では空母運用が始まったばかり。当然、この分野では中国が先行しており、やはり経験値の差が否めません。

練習空母「遼寧」の今後

基本的なノウハウの習得、国産空母への橋渡しは済んだものの、中国が空母戦力を増強する限り、練習空母の有益性は変わりません。

それは単なる練習艦にとどまらず、大規模な訓練では敵空母の役を担い、他の空母や艦艇の訓練を支援しています。

たとえば、中国は毎年のように台湾を囲み、実戦に即した訓練を行うなか、遼寧は台湾東岸の沖合に進み、アメリカ空母の役を演じてきました。これはこれで貢献度が大きく、中国海軍の能力向上に寄与しています。

また、あくまで練習空母といえども、18〜24機の戦闘機を搭載できるため、実戦でも使い道はあるでしょう。

機数だけで比較すれば、日本の「いずも型」軽空母を上回り、アメリカの「ライトニング空母(強襲揚陸艦)」に匹敵します。もちろん、海自と米海軍は最新のF-35Bを積み、中国のJ-15より圧倒的に高性能ですが。

その航空戦力は無視できない

それでも、20機以上の航空打撃力を持ち、戦力投射できる点は変わらず、実戦では陽動・撹乱に役立ち、地上に対する航空支援でも有用です。少なくとも、敵の戦力分散を誘発するべく、台湾有事では沖縄〜小笠原に進出する可能性が高く、それだけで日米は警戒せねばなりません。

以上のことをふまえると、平時は中国海軍の練度を上げる存在、戦時では「いるだけで厄介」です。

しかも、これを破格の値段で買い、その後の改修費を合わせても、約200億円で済んでいます。わずか200億円で練習空母を入手できたほか、海軍の能力を飛躍させたわけですから、中国にとっては最高の買い物(投資)でした。

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