なぜ旗艦?アメリカ海軍の揚陸指揮艦「ブルーリッジ」とその後継

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米第7艦隊の「頭脳」

アメリカ海軍の「第7艦隊」といえば、日本の横須賀を母港にしながら、世界最強の艦隊とされてきました。この評価は決して間違っておらず、いまだ他国をしのぐ作戦能力を誇ります。

ところが、艦隊旗艦は意外にも原子力空母ではなく、「ブルーリッジ」という古い揚陸指揮艦です。

  • 基本性能:ブルーリッジ級揚陸指揮艦
排水量 19,609t
全 長 193.2m
全 幅 32.9m
乗 員 最大1,200名
速 力 23ノット(時速43km)
航続距離 約18,500km
兵 装 20mm CIWS×2
25mm機関砲×2
12.7mm機関銃×8
艦載機 ヘリ2機を駐機可能
建造費 約60億円(当時)

ブルーリッジ級は艦隊運用を担うべく、1970年に就役した作戦指揮艦であって、生まれながらの旗艦といえます。かなり充実した指揮・通信機能を持ち、艦隊の頭脳として設計されたため、他の艦艇とは異なる特殊な船です。

通信設備に加えて、多くの司令部要員を乗せることから、強襲揚陸艦をベースにしており、約1,200名が収まる広さを確保しました。約90日間にわたって活動できるほか、最大3,000人の緊急避難を支援する能力さえあります。

なお、姉妹艦は「マウント・ホイットニー」しかおらず、こちらは第6艦隊旗艦として、イタリアに駐留しています。

最前線で艦隊指揮を執る以上、定期的な近代化改修は欠かせず、ブルーリッジも何度かアップデートされてきました。それゆえ、古い見た目にもかかわらず、最新の通信・情報処理設備を誇り、統合作戦を指揮するシステムを備えています。

世界中の部隊とリアルタイムで連携すべく、甲板には多くの通信アンテナが並び、サイバー攻撃や電子戦への耐性も高めました。

一方、ミサイルなどは電波干渉を起こすことから、必要最低限の自衛火器しか持っておらず、甲板上の構造物も極力なくしました。後部甲板にはヘリ2機が駐機できるものの、専用の格納庫はありません。

また、現在は需要が減ったとはいえ、旗艦として連絡や広報業務を行う関係から、船内には出版印刷所並みの設備が整い、高い情報作成・共有能力を持っています。この能力をふまえて、インド太平洋で広報活動することも多く、パトロールを兼ねながら、しばしば長期航海に出かけてきました。

旗艦として50年近く活動

さて、米第7艦隊は太平洋からインド洋まで担い、広大なエリアでの活動を支えるべく、ブルーリッジは1979年に第7艦隊の旗艦になりました。

その任務は現在も変わらず、第7艦隊の司令官は原子力空母ではなく、ブルーリッジに座乗しながら、空母打撃群と潜水艦部隊、海兵隊遠征部隊などを統括・指揮してきました。

実戦経験という点では、ブルーリッジはベトナム戦争に参加したほか、1991年に湾岸戦争が起きたとき、現地で臨時旗艦を務めました。

旗艦「ブルーリッジ」(出典:アメリカ海軍)

日米共同演習などはもちろん、有事でも海上司令部として働くため、戦術データの共有から作戦計画の策定、各部隊の調整と指揮を行います。

どうしても原子力空母が注目されがちですが、その裏ではブルーリッジが戦力発揮を支えているわけです。約50年も中心的役割を果たしてきた以上、もはや第7艦隊はブルーリッジなしでは機能せず、円滑な艦隊活動には欠かせません。

後継はつくらない?

すでに就役から50年以上が経ち、さすがに船体の老朽化が目立つなか、後継艦に向けた動きは見た当たらず、ブルーリッジは2039年まで運用予定です。

近代化改修を受けたとはいえ、現代戦では最先端のシステムが必要になり、現状では情報優位性の確保に限界があります。新しい旗艦を造るのか、既存艦艇を改造するか不明ですが、そろそろブルーリッジの「先」を考えるときでしょう。

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