うるさくて失敗?ASCOD歩兵戦闘車の性能について

ASCOD歩兵戦闘車 歩兵戦闘車
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西・澳の共同開発

歩兵戦闘車といえば、アメリカの「M2ブラッドレー」が有名ですが、その登場を受けて各国でも独自開発が進み、「ASCOD(アスコッド)」はその一例になります。

聞きなれない車両とはいえ、これはスペイン・オーストリアの合作であって、その名称はAustrian Spanish COoperation Development、すなわち「オーストリア・スペインの共同開発」を略したものです。

ただし、スペインでは「ピサロ」と呼び、オーストリアでは「ウラン」の名前で知られています。

  • 基本性能:ASCOD歩兵戦闘車
ピサロ ウラン
重 量 23.8t 28t
全 長 6.83m 9.5m
全 幅 3.64m
全 高 2.43m
乗 員 3名+同乗7名 3名+同乗8名
速 度 時速72km
兵 装 30mm機関砲×1
7.62mm機関銃×1
価 格 1両あたり約15億円

ASCODはM113装甲兵員輸送車を更新するべく、オーストリア・スペインの両国が共同契約を結び、1990年代を通して研究・開発したあと、2002年から配備が始まりました。

「ピサロ」「ウラン」は細部が異なるものの、双方とも戦場まで数人の兵士を運び、30mm機関砲で援護する点は同じです。この機関砲は770発/分の発射速度に加えて、最大50度の仰角を誇ることから、建物上層部に潜む敵兵や攻撃ヘリなどを狙えます。

また、二重の給弾システムを通して、対装甲弾と時限信管式の散弾から選び、目標に応じて使い分ける仕組みです。

前者は1km先の110mmの装甲を貫き、理論上は軽戦車ぐらいは撃破できます。後者はタングステン製の子弾を135個も含み、非装甲車両をハチの巣にしたり、攻撃ヘリの撃墜で効果を発揮します。

射撃時は光学・赤外線装置、レーザー測距儀を使い、コンピュータが弾道計算をすれども、初期型は全体的に性能が安定しておらず、改良型では新たに赤外線画像装置を組み込み、射撃管制システムを刷新しました。

その結果、索敵から射撃までシステム化を図り、各モニターを通して車内外の情報共有を進めました。

状況認識の点でいえば、乗降用のドアには小窓とともに、ガンポートが付いており、兵士が車内から外の様子を確認したり、そのまま射撃できるようになっています。

防御力はイマイチ?

ASCODは歩兵戦闘車である以上、ある程度は敵と交戦する前提ですが、防御力の低さが指摘されてきました。

その装甲防護力をみると、正面部分は14.5mm弾まで耐えるものの、それ以外は基本的に7.62mmが上限にあたり、砲弾の破片から乗員を守り切れるかどうか、疑いの目が向けられています。

鋼鉄板の増加装甲を追設すれば、正面防護力は対30mm弾まで伸び、全体では14.5mm弾まで耐えるそうですが。

ASCOD歩兵戦闘車ASCOD歩兵戦闘車

それでも、レーダー反射を抑えた車体設計にしたり、発煙弾の充実で煙幕展開能力を高めるなど、防御力を補う工夫をしてきました。なお、一部のピザロは爆発反応装甲を使い、対戦車ミサイル(成形炸薬弾)に対する防御力を強化しました。

一方、ASCODは同世代の歩兵戦闘車と同じく、NBC兵器(放射能・生物・化学)に備えるべく、空気清浄システムで十分な防護力を確保しています。

派生型でファミリー化

さて、ASCODは歩兵戦闘車が基本型とはいえ、戦闘指揮型、迫撃砲搭載型、修理回収車両型が存在するほか、105mm砲を搭載した軽戦車バージョン、対空ミサイル・対戦車ミサイルを積むタイプがあります。

いわゆる「ファミリー化」が進み、シリーズ全体ではスペインが261両、オーストリアが112両を導入しました。

現在は改良型の「ASCOD 2」をつくり、ラトビアが80両以上を購入するなど、海外輸出にも注力中です。

ファミリー化は西・澳両国にとどまらず、ASCOD 2を事実上のベースにした結果、イギリスの「AJAX」シリーズを生み、アメリカの「M10ブッカー」は軽戦車でありながら、ASCODの延長線にある車両です。

つまり、マイナーな歩兵戦闘車にもかかわらず、多くの派生型に枝分かれしており、意外な車両の「先祖」になりました。

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