世界から戦争がなくならない理由、原因は何か?

戦争のイメージ 外交・安全保障
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国際秩序の実態

いまも世界では戦争・紛争が絶えず、最近は国家間戦争が各地で起きるなど、時代を逆行しているようにさえ感じます。
では、その根本的原因は何なのか?
民族・部族間の禍根、宗教的な要因があるなか、ここでは国家間戦争に焦点を絞り、その本質的な原因を考察します。

「政治」とは何か

著名な軍事学者のクラウゼヴィッツによると、戦争は政治目的を実現させる手段であり、政治の延長線上にある暴力行為です。
したがって、まずは「政治」を理解せねばならず、ここから簡単に解説します。

国内・国際政治を問わず、「政治」をひと言で説明すると、希少価値の権威的な配分行為です。別の言い方をすれば、希少価値を巡る利害の調整といえます。

この希少価値はあらゆる権益を含み、土地や資源のようなモノだけではなく、目に見えない利権(影響力など)もあります。

国内では「政府」が権威的配分を担い、価値を税金という形で吸い上げたあと、国民に再配分する感じです。また、民主主義体制では選挙制度により、政治権力を議席で分配してきました。

つまり、国内では国民が選挙で政府を選び、平和的に権力を分配・移譲しながら、その政府に価値配分を任せています。

当たり前のように選挙を行いますが、それは血を流さない平和な戦争、いわば内戦の代替手段なのです。昔は武力で土地を奪い合っていたところ、その戦いを平和的な制度に落とし込み、代わりに票を奪い合うシステムにしました。

世界政府の不在

国内は選挙というシステムを使えば、権力を平和的に移行できますが、国際社会ではそうはいきません。

国際社会も国内と変わらず、領土や資源という価値の分配を巡り、政治的な闘争を繰り広げています。しかし、国内と違って「世界政府」はなく、権威的な再配分が困難です。

国連のような機関はあれども、各国による協調の場にすぎず、肝心の権威と能力が足りません。言いかえると、主権国家に勝る「上級組織」が存在せず、各国を従える共通の権力がありません。

その結果、価値の配分は大国の差配で決まり、これが事実上の国際秩序になります。しかも、大国同士で折り合いが付かないと、戦争で無理やり再配分を行い、戦勝国が秩序を築いてきました。

政治が希少価値の分配である以上、戦争はそれを強制する最終手段です。国際秩序とはその戦争によって創り、戦後秩序とほぼイコールになります。

現在の国際秩序とは

以上のとおり、国際秩序とは戦勝国による配分にすぎず、敗戦国や中・小国はそれに従うのみです。

一方、あくまで建前とはいえども、現在の国際社会は国連体制を前提にしており、表向きは法の支配を掲げてきました。たとえ米露のような大国でも、正当な理由なく軍事力は行使できず、なにかしらの大義名分が必要です。

そして、それは1944年のダンバートン・オークス会議において、アメリカ・イギリス・ソ連・中華民国が決めました。さらに、世界経済を安定させるべく、同じ1944年に米ドル中心の通貨制度を築き、ブレトン・ウッズ体制として確立させました。

戦後秩序の説明図

ソ連崩壊で勢力図は大きく変わり、アメリカ中心の時代に移行するも、五大国中心の国連体制、ブレトン・ウッズ体制は基盤として残り、一応は今日まで続いています。

すなわち、戦勝国は国際法による基盤構築を試み、「力による秩序」と組み合わせながら、自分たちに有利な状況を維持してきました。

現状認識の食い違い

戦勝国が列強の地位にいる限り、戦後秩序はなんとか保たれますが、力関係に変化が生じると揺らぎます。新しい強国が現れたり、敗戦国が力を盛り返せば、現状に不満を感じるでしょう。

日本も決して例外ではなく、世界2位の経済大国になっても、国連常任理事国の席はもらえず、領土面でも現状認識の差があります。

北方領土の例をあげると、日本の視点ではソ連が終戦後に奪い、火事場泥棒で失った固有領土です。これがロシアの目線で見ると、戦争による正当な結果であって、日本とはスタート地点が違います。

そんなロシアは冷戦に負けたにもかかわらず、いまだ東欧圏を自分の勢力圏だと考えており、勝利した西側とは現状認識が異なります。ソ連の自滅は特殊な事例にあたり、分かりやすい決着ではなかったにせよ、冷戦後の現状に対する認識の差を生み、最終的にはウクライナ侵攻につながりました。

台湾に関する論争も同じく、中国にとっては未回収の自国領土ですが、アメリカは国共内戦の結果をふまえて、台湾島を中華人民共和国領とは考えていません。

現状認識の違い

結局のところ、「どこ」を基準にするかで認識は変わり、そこが食い違うだけで紛争の火種になります。

領土に限らず、人間は何かを獲得すると、その時点で基準点ができますが、逆に失った側の立場になると、基準点は以前の場所で止まりがちです。たとえ同じ土地であっても、獲得側と喪失側では基準点が異なり、両方とも「自分のもの」と認識します。

平和的変革の難しさ

既存秩序が戦勝国による取り決め、前回の戦争の結果である以上、時代の移り変わりとともに、現状への不満が出るのは仕方ありません。問題は現状に対する不満が出た場合、それを平和的に変革する手段がないことです。

中国がアメリカに経済・軍事の両方で迫り、次の覇権国候補として浮上するなか、彼らはアメリカ優位の現状に不満を抱き、自分好みに変えようとしています。

従来の国際制度を変えられないと見るや、中国主導のアジア・インフラ投資銀行(AIIB)を創設するなど、日米主導のアジア開発銀行(ADB)に対抗しました。

本当は力関係の変化に合わせて、制度を柔軟に変更すべきでしょうが、既得権益を簡単に手放す者などおらず、創設者優位の状況は変わりません。

これは国内政治も同様であって、選挙で勝って政権与党にならなければ、政策を変更できません。されど、先ほども説明したとおり、国際政治には選挙のような手段がなく、既存の制度を改正するのは困難です。

そうなると、自分で別の機構や制度を創設するか、現在の覇権国に挑むしかありません。後者の道を進めば、大国の覇権戦争につながり、結果次第で新たな秩序が生まれます。

次の覇権候補が台頭するなか、現在の覇権国がその地位を譲り、穏便に「世代交代」するでしょうか?

歴史をさかのぼると、ほとんどの覇権国は次の強国を抑え込み、自分の地位を守ろうとします。

最近の例外をあげると、イギリスからアメリカに覇権が移り、両者は衝突せずに世代交代したものの、これはイギリスが2度の世界大戦で国力を失い、帝国を維持できなくなったからです。

こうした特異例を除けば、既存の覇権国は次の挑戦者を恐れて、その拡張を防ごうと試みます。

国内・国際政治の違い

つまるところ、国内の選挙システムとは違って、国際社会では平和的変革の制度がなく、現行の諸制度は変更の柔軟性を欠き、権力の平和的移行(覇権国の交代)ができません。

だからこそ、現状に対する不満、認識の違いが発生すると、戦争という政治手段を選び、自らの意思を強制しようとします。

平和的変革が難しい限り、国家間戦争はなくならず、世界統一政府の発足を待つか、なんらかのシステムを発明するしかありません。

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