ドンロー主義?トランプの「アメリカ・ファースト」の実態

外交・安全保障
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実態は「選択と集中」

トランプが推し進めるアメリカ・ファーストの政策。

一般的に「アメリカ優先」と訳されるなか、いろんな解釈が飛び交ってきました。

「アメリカは世界の警察官を辞めた」
「アメリカは西半球に引きこもる」
「世界各地の米軍を撤退させる」

しかし、これらは一定の真実とともに、やや間違った認識を含みます。

まず、アメリカ・ファーストとは「孤立化」ではなく、あくまでアメリカの国益を優先するべく、冷徹な「選択と集中」を行うことです。

アメリカ社会の疲弊、相対的な国力の衰退をふまえて、対外関与は死活的利益だけに絞り、余計な問題には関わりません。言いかえると、アメリカの国益に合致すれば、軍事的な関与でも続けます。

だからこそ、ウクライナ支援には消極的なのに対して、シーレーンを脅かすフーシ派を空爆しました。トランプの視点に立つと、前者は死活的利益ではなく、主にヨーロッパの問題です。一方、フーシ派の問題を放置すれば、輸送コストの上昇でインフレが進み、アメリカ国民の生活を直撃します。

アメリカの関与を引き出すならば、彼らの死活的利益に該当せねばならず、自分の「価値」を高める必要があります。

西半球を優先する

こうした選択と集中において、まずはアメリカ本土とその周辺地域、つまり南北アメリカのある「西半球」を優先します。他の地域の優先順位は下がり、これは国家安全保障戦略にも現れています。

トランプはこれを「ドンロー・ドクトリン」と呼び、かつての「モンロー・ドクトリン」を引用しながら、自身の名前である「ドナルド」と組み合わせました。

モンロー・ドクトリンといえば、モンロー大統領が提唱した外交原則であり、1823年の議会演説に起因します。「アメリカが欧州のいざこざに関わらない代わり、欧州側もアメリカ大陸に手を出すな」、という相互不干渉の宣言(提案)です。

しばしば「孤立主義」と説明されがちですが、実際は西半球から欧州の影響力を取り除き、自分の勢力圏にする帝国主義的な発想でした。

ドンロー・ドクトリンの本質も変わらず、アメリカの勢力圏として固めるべく、西半球から中国・ロシアを排除する狙いです。ベネズエラに特殊部隊を送り込み、マドゥロ大統領を拘束・拉致したのも、反米政権の首班だけではなく、中露の影響力を取り除くためでした。

ニクソン・ドクトリンとの類似

選択と集中、対外関与の緩和は初めてではなく、実は過去にもありました。

たとえば、ベトナム戦争の泥沼化を受けて、アメリカでは社会の疲弊と分断が進み、閉塞感が漂います。その結果、ニクソン大統領は1969年に方針転換を行い、過度な軍事介入から手を引き、代わりに同盟国の負担増を求めました。

これは「ニクソン・ドクトリン」と呼び、主にアジアでの対外関与を抑制して、日本などの自主防衛を奨励しました。その狙いは関与コストの削減、責任の再分配であって、現在の状況と似てます。

ニクソン大統領

そもそも、アメリカの歴史を見ていくと、以下のサイクルの繰り返しです。

  1. 「使命感」に基づいて、対外進出(関与)に取り組む

  2. 経済不況や戦争の泥沼化で社会が疲弊する

  3. 国民の不満が高まり、孤立主義に傾く

おおまかにいえば、「外向き」「内向き」の志向が交互に来ます。

直近の例をあげると、自由・民主主義を擁護するべく、対テロ戦争を繰り広げたものの、出口のない消耗戦に陥りました。その間、2008年に経済危機(リーマン・ショック)が起き、国内の経済格差はさらに広がります。

こうして疲れ果てたところ、トランプが現れてアメリカ優先を叫び、多くの国民が熱烈に支持しました。

「内向き」のフェーズに入ったわけです。

対イラン戦争は例外?

では、イランとの戦争はどうなのか?

アメリカ最優先、西半球優先にもかかわらず、イランと全面戦争を始めてしまい、これはトランプらしからぬ行動です。

ところが、トランプの強い願望ではなく、イスラエルのネタニヤフ首相がツケ込み、巧みに誘導した感があります。

2026年1月にイランで反政府暴動が起き、ハメイニ体制が危機に直面すると、ネタニヤフはトランプに近づき、政権転覆案をささやきました。

ネタニヤフいわく、イランの指導層が空爆で吹き飛べば、あとは反政府暴動が全土に広がり、それで体制崩壊まで簡単に追い込める。いまこそハメイニ打倒の好機であり、その偉業は歴代大統領の比ではないと。

トランプの自尊心をくすぐり、彼をうまくダマせたものの、戦争は予想より長期化してしまい、トランプはひたすら出口を求めています。

公には認めずとも、内心はネタニヤフに激怒しており、側近に八つ当たりするなど、自身の決断を後悔しているはずです。

得られる教訓とは

アメリカの現状を考えると、世界の警察官は荷が重く、実際にその役割は辞めたといえます。

されど、警察官までは辞めておらず、あくまで西半球を優先しながら、本当に重要な問題とみなせば、条件付きで他地域にも介入します。地元のお巡りさんに転向するが、隣町で重大事件が起きたら、応援で駆けつけるイメージです。

隣町の住人として言えるのは、アメリカに駆けつけてもらうべく、普段から自分の「存在価値」を高めておき、同時に近所同士の結びつきを強めたり、自主防衛を進めるしかありません。

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