マッハ5以上で攻撃
自衛隊が反撃能力の整備を進めるなか、防衛省は2027年度予算において、新たに「極超音速誘導弾」の費用を盛り込み、さらなる反撃手段を目指しました。
これはスクラムジェット・エンジンを使い、マッハ5以上の速度で飛行するとともに、予測と迎撃を困難にするべく、変則的に動き回るミサイルです。
スクラムジェットはラムジェットと同じく、空気を圧縮するジェットエンジンの一種ですが、後者は超音速の空気を取り込んだあと、音速以下に減速させながら、燃料を吹きかけて燃焼させます。
エンジン構造が比較的シンプルな分、マッハ5以上では燃焼効率が落ち、マッハ3の速度域に適した技術です。
一方、スクラムジェットでは空気は減速せず、超音速のままで燃焼させるため、マッハ5以上の極超音速を実現しました。当然、極超音速の方が威力は高いものの、複雑な構造と技術を用いるため、開発のハードルは上がります。
日本は「ASM-3改」でマッハ3の壁を破り、25式高速滑空弾で極超音速を達成しましたが、今回のミサイルはそれに続くものです。
25式高速滑空弾との違い
では、25式高速滑空弾と何が違うのか?
まず、どちらも離島防衛を念頭に置き、敵の射程圏外から上陸部隊、あるいは水上部隊を攻撃する、事実上の対地・対艦ミサイルです。
しかし、25式が高高度まで上がったあと、弾頭部分を切り離しながら、目標まで滑空飛行するのに対して、極超音速誘導弾は滑空体ではなく、あくまで巡航ミサイルの部類に入ります。
変則飛行するといえども、滑空体は搭載しておらず、弾頭も切り離しません。いわば、巡航ミサイルの延長線にあたり、その速度を極めたバージョンです。
ただ、コスト節約と開発期間の短縮を考えて、ロケットの一部は共通化しており、同じ三菱重工業が開発を担当しました。
こうした共通点を考慮すれば、極超音速誘導弾と25式の射程は近く、最大2,000〜3,000kmと思われます。南西諸島や台湾どころか、中国本土も余裕で射程に収まり、有効な反撃手段になるほか、抑止力を高めるとされています。
潜水艦発射型も開発中
予定では2031年に開発が終わり、そのまま量産体制に移行しますが、長い射程と圧倒的な速度を考えると、25式と同様に南西方面には配備せず、北海道などの後方地域に置くはずです。
発射機はトラックの荷台に積み、機動展開で生存性を高めながら、敵を射程圏外から狙います。対地攻撃にせよ、対艦攻撃にせよ、マッハ5の運動エネルギーが当たれば、どんな大型目標も木っ端微塵です。
ただでさえ極超音速で迫り、変則軌道で迎撃が難しいのに、さらに別で水中発射型の開発を行い、潜水艦での運用を目指しています。
もともと隠密性が高いにもかかわらず、潜水艦を極超音速兵器と組み合わせれば、脅威度と奇襲効果は一気に高まり、相手にとっては悪夢に等しいでしょう。
潜水艦の場所が分からないなか、いきなりマッハ5以上のミサイルを放ち、予測不能な軌道で飛来するわけですから。
すでに潜水艦から発射するべく、別の巡航ミサイルも開発中ですが、極超音速誘導弾が戦列に加われば、その威力は飛躍的な進化を遂げます。
なお、似たような兵器として、ロシアのツィルコンがあるものの、こちらはウクライナが残骸を分析したところ、スクラムジェットエンジンは使っておらず、ラムジェットエンジンたと判明しました。
つまり、ツィルコンは極超音速ではなく、超音速のミサイルにとどまり、このまま日本の開発・量産が進めば、実用化では世界初になります。
防衛政策の大転換以来、日本の兵器開発が加速しましたが、他国に遅れをとっていたところ、極超音速兵器で一気に飛び越えました。25式高速滑空弾に続き、いきなりトンデモ兵器が手に入り、世界最先端を歩みます。


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