ミニ・ミサイル防衛を担うC-RAMとは何か?

アメリカ
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ロケット弾や砲弾を迎撃

アメリカは2001年の同時多発テロ事件が発生してから20年以上にわたる対テロ戦争を続けてきましたが、その際に課題として浮上したのが非対称戦闘のおけるロケット弾や迫撃砲に対する防御。

弾道ミサイルへの対処能力すら持つ米軍にとってロケット弾や砲弾の撃墜は容易と思いきや、こうした小さい目標はレーダーで探知しづらく、射程距離が短いがゆえに迎撃する時間的余裕がありません。

したがって、イラクやアフガニスタンに展開した米軍は近距離で即応的に対処できる迎撃手段を求めるようになり、その結果として誕生したのが「C-RAM」と呼ばれる防空システム。

「Counter-Rocket, Artillery and Mortar(対ロケット弾、砲弾、迫撃砲弾)」を略したC-RAMは、飛来するロケット弾などを早期探知して迎撃する防空システムの総称で、特定の兵器を指すわけではありません。

例えば、よく知られている20mm CIWS「ファランクス」を陸上車載型にした「LPWS(センチュリオン)」はあくまでC-RAMを構成する兵器のひとつに過ぎず、ほかにも「MANTIS防空システム」や「ABRAHAMミサイル・システム」、そしてあのイスラエルの「アイアン・ドーム」が含まれます。

ちなみに、アメリカではLPWSをそのままC-RAMと呼ぶ傾向があるものの、ここで説明したように厳密には違うのです。

C-RAMの一種である「LPWSセンチュリオン」(出典:アメリカ陸軍)

さて、ここでC-RAMの代表例となったLPWSについてみていくと、外見や基本性能は水上艦向けのファランクスとほとんど変わらず、毎分4,500発の発射速度を誇る点も同じです。

ただし、対砲兵レーダーの搭載や20mm弾への自爆機能の付与などの改良は施されており、飛翔体を探知したら未来位置を予測したうえで味方に警告する仕組みになっています。

また、アフガニスタンからの撤退作戦が行われていた首都カブールの空港に展開したLPWSは過激派の放ったロケット弾を撃墜することで同兵器が実戦で使えることを証明しました。

このように既存兵器を応用したLPWSから新開発の防空ミサイルまで網羅するC-RAMは弾道ミサイルと比べて低脅威の飛翔体を迎え撃つ「ミニ・ミサイル防衛」を担います。

さらに、スイッチブレードのような自爆ドローンの脅威が認識されるなか、すでにロケット弾の迎撃で有効性を示したC-RAMをドローン対策にも活用することが検討されています。

コスパ重視の防空兵器

機関砲から防空ミサイルに至るまでの各種兵器で構成されるC-RAMですが、LPWSのように20mm CIWSをトラックに積んだ簡易兵器は開発費用が安く済むというメリットがありました。

そもそも、迎撃には費用対効果の問題が常に付きまとい、C-RAMも同様に「安いロケット弾や砲弾の迎撃にどこまでコストをかけるのか?」という悩みにぶち当たります。

ロケット弾などの低コスト兵器は、簡単に多数入手できる利点から、使用者は命中率の低さを数で補うように撃ち込む一方、当たればそれなりの被害が出るので迎撃側も決して侮れません。

このような安くて厄介な兵器に対して比較的コストをかけずに対処するのがC-RAMの役割であって、C-RAM向けの新兵器を開発する場合は、他分野よりもコストを意識せざるをえないのです。

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