スウェーデンの早期警戒機!Saab340(S100D)の探知能力

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小型旅客機を改造

現代戦では戦闘機だけでなく、広範囲を探知できる早期警戒機が欠かせず、多くの旅客機改造型が使われてきました。スウェーデンの「Saab340 AEW」もそのひとつであり、小型旅客機の背中にレーダーを載せた形です。

  • 基本性能:Saab340(S100D)
全 長 20.57m
全 幅 21.44m
全 高 6.97m
乗 員 6名
速 度 時速520km
行動時間 最大7時間
高 度 7,620m
探知能力 約300〜450km
価 格 1機あたり約50億円

Saab340は1997年に配備が始まり、スウェーデンでは「S100Dアルグス」という名前で使われています。本国では2機しか運用されておらず、あとはポーランドやタイ、アラブ首長国連邦に輸出されました。

従来の円型レーダーではなく、「エリアイ」という長方形タイプを持ち、おなじみの回転はしません。非可動式とはいえ、約300〜450kmの探知範囲を誇り、7時間近くにわたって行動可能です。

天候などの状況次第ですが、最大1,000個の空中脅威、あるいは500個の地上目標をとらえて、優先度の高い順に情報共有します。その監視面積は最大50万㎢とも言われており、自国周辺の警戒には十分すぎるほか、調達価格は45〜50億円と手頃です。

ウクライナへの供与

スウェーデンでは新たな早期警戒機として、同じSaab社の「S106グローバル・アイ」の導入が決まり、2027年には配備予定です。

いずれSaab340は余ることから、ウクライナに対する軍事支援に盛り込み、2機とも供与しました。露宇戦争は地対空ミサイルの脅威により、ロシアもウクライナも航空優勢をとれておらず、長期間の停滞戦線につながりました。

なんとか戦局を打開すべく、ウクライナはF-16戦闘機を入手したものの、期待されたほどの戦果は出せず、「切り札」とまではなっていません。

供与されたSaab340(出典:スウェーデン空軍)

ただ、Saab340のデータリンク機能を使えば、F-16戦闘機と連携できるようになり、その能力をさらに引き出せるでしょう。早期警戒機は戦闘機より探知能力が高く、安全な後方から戦線全域を見渡せるため、全体的な作戦能力を飛躍させます。

それは前線付近にとどまらず、都市部の防空戦でも役立ち、現状よりは戦いやすくなるはずです。

ただ、早期警戒機は敵に狙われやすく、その数も2つしかない以上、絶対に守りきらねばなりません。1機でも失えば、ウクライナの作戦能力は大きく減り、戦局打開は遠のきます。

一方、ロシアは早期警戒機を2機も失った結果、その後は投入をためらいながら、作戦能力が制約されてきました。この撃墜戦果をふまえると、ロシアが報復としてSaab340を狙い、最優先目標にする可能性は高いです。

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