「撃ちっ放し」できる強み
現代空戦では対空ミサイルを使い、近年は相手を視認しないまま戦う、有視界外戦闘に移行しています。そこで西側諸国で登場するのが、アメリカが開発した「AIM-120(アムラーム)」です。
- 基本性能:AIM-120D アムラーム(最新型)
| 重 量 | 約160kg |
| 全 長 | 約3.65m |
| 直 径 | 17.8cm |
| 速 度 | マッハ4(時速4,940km) |
| 射 程 | 最大180km |
| 弾 頭 | 炸薬量:20kg |
| 価 格 | 約2億円 |
その開発は1970年代にさかのぼり、1992年に量産が始まったあと、同年にイラクの戦闘機を撃墜しました。
従来の「スパロー」に比べると、サイズはひと回り小さく、軽量化に成功しています。出撃時の携行本数を増やすとともに、中距離ミサイルを装備できる機種が広がり、戦闘機の生存性(残存性)を向上させました。
また、それまでの対空ミサイルといえば、母機が命中まで誘導せねばならず、目標を最後まで捕捉していました。
一方、アムラームは複数の誘導方式を使うものの、最終的には自分で捕捉・追尾を行い、いわゆる「撃ちっ放し能力」を獲得しました。最大マッハ4の速度で目標に迫り、爆発で破片を撒き散らしながら、航空機・ミサイルを撃墜する仕組みです。
その結果、発射後の母機は離脱行動に入り、撃墜されるリスクを減らせます。有視界外戦闘をする場合、レーダーで見つけた後にアムラームを放ち、反撃前に回避行動に移るわけです。
しかも、アムラームは電波妨害に強く、敵の妨害電波を探知すると、発信元に向かって飛び、そのまま撃破できます。なお、戦闘機の種類によるとはいえ、アムラームは複数の目標に対応したり、同時攻撃する能力も備えました。
いずれにせよ、アムラームは自律誘導機能を持ち、中・遠距離戦で大きな優位性をもたらします。
最新型は「長射程」ミサイル
同じアムラームといえども、改良型を含む複数のタイプがあって、いまの最新型は「AIM-120D」です。
初期型(A型)と比較すると、機動性・射程・命中精度が大きく異なり、探知能力や対ジャミング機能が進化しました。
射程だけに限っても、A型の約70kmから最大180kmまで伸び、もはや中距離ミサイルではなく、長距離(長射程)ミサイルにあたります。
当然、アメリカ以外の同盟国も欲しがり、違うシステムに統合できる設計のため、現在は40カ国以上で運用されています。本来は米軍機向けとはいえ、F-22やF-35戦闘機のみならず、ユーロファイター(タイフーン)などに組み込み、西側標準の空対空兵装になりました。
日本では航空自衛隊のF-35で使うべく、約10年前から調達を進めていますが、今後は国内でライセンス生産が始まり、価格の抑制と弾薬の確保を目指します。冷戦期の空自など、「3時間で弾薬が尽きる」とされたものの、最近は自衛隊全体で弾薬の増産が進み、アムラームの国内生産もその一環です。
西側標準の装備品である以上、同盟国のアメリカは言うまでもなく、NATOや友好国と互換性を持ち、戦時での相互融通・支援を期待できます。
台湾有事にせよ、尖閣有事にせよ、日本単独では中国に対処できず、他国の軍事支援が欠かせません。ロシア=ウクライナ戦争を見ても、対空ミサイルは消費量が激しく、アムラームの相互運用性は必ず役立ちます。
実戦経験でアップグレード
アムラームは空対空ミサイルですが、地上発射型(地対空)も存在しており、「NASAMS」防空システムで運用されています。NASAMSはアメリカに加えて、ノルウェーが開発した兵器ですが、使用するミサイルはアムラームの派生型です。
NASAMSといえば、ウクライナでロシアの空爆を迎え撃ち、多数のミサイルとドローンを撃墜してきました。そして、この最新の実戦データに基づき、アムラームはソフトウェアの更新を行い、さらなる性能の向上を試みています。
その代わり、欧州各国の在庫が減少したほか、対中国での消費予想量を考えると、アメリカ単独での増産では追いつかず、西側全体で生産体制を強化せねばなりません。
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