巨大な防衛拠点に?海上自衛隊・佐世保基地の拡張について

外交・安全保障
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岸壁不足を一気に解消

対中国シフトが進むにつれて、南西方面の佐世保基地の重要性が高まり、日米ともにその価値を再認識しています。

ところが、佐世保基地は大きな軍港でありながら、海上自衛隊と在日米海軍が同居しており、現状では収容能力が足りていません。これは佐世保だけではなく、横須賀基地でも同じですが、敗戦の影響で「一等地」は米海軍が使い、海自は隅っこに追いやられてきました。

横須賀の例をあげると、海自は旧海軍基地の約3割しか使えておらず、係留場所と岸壁の不足に悩んできました。佐世保基地でも苦悩は変わらず、大型艦が接岸できるのは立神岸壁しかなく、これは米海軍から借りている状態です。

立神岸壁しか使えない以上、護衛艦は船同士で横並びに停泊せざるをえず、その利便性の悪さと見た目から、海自では「メザシ係留」と呼んできました。

崎辺東エリアの拡張(出典:防衛省)

このように係留場所が足りないなか、防衛省は「崎辺東地区」に新たな岸壁を築き、一気に収容能力を底上げするつもりです。もともと、崎辺東地区は米海軍が使っていたものの、米軍再編計画の一環として2021年に返還されました。

当然、この千載一遇の好機を逃すはずがなく、約320億円で大型艦向けの岸壁とともに、新しい弾薬庫と補給・整備施設をつくり、複合的な防衛拠点を目指します。ただし、同じく拡張する呉基地は違って、民間企業の誘致は計画しておらず、あくまで自衛隊専用の地区になります。

2029年に完成すれば、イージス艦などの護衛艦はもちろん、「いずも型」軽空母や補給艦も問題なく収まり、「メザシ係留」が大きく緩和される見込みです。

水陸機動団との連携強化

海自の視点で考えると、佐世保は南西諸島と朝鮮半島をにらみ、まさに西の「要」といえる重要拠点です。だからこそ、保有する8隻のイージス艦のうち、半数が佐世保を母港にしており、横須賀と並ぶ「精鋭部隊」になりました。

しかも、拡張予定の崎辺東エリアの西側を見ると、そこには陸上自衛隊の分屯地があって、水陸機動団の上陸部隊が配備されています。

水陸機動団が離島防衛を担う以上、彼らを前線まですばやく運び、海上からも上陸を支援せねばなりません。崎辺東地区の拡張にともなって、隣接する水陸機動団との連携、運用面での効率が飛躍するでしょう。

たとえば、従来は別の岸壁まで装備品を持っていき、そこで海自の輸送艦に搭載していたところ、今後は分屯地から隣の岸壁まで走り、そのまま乗り入れることが可能です。

つまるところ、崎辺エリアの東西地区は拡張を通して、陸・海の統合運用拠点に生まれ変わり、佐世保の基地能力を底上げします。

余談ながら、崎辺東・西地区は第二次世界大戦において、旧海軍の航空隊が使っていた歴史を持ち、今回の返還で日本海軍の手に戻りました。横須賀近くの日産工場(こちらは未定)、呉基地横の製鉄所跡も似た歴史のため、近年は旧海軍地区の返還が進み、防衛拠点の拡張に貢献しています。

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