迎撃困難?ロシアが誇るキンジャール・ミサイルの速度と性能

ロシア
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イスカンデルの空中発射版

2022年のウクライナ侵攻以降、同地は兵器の実験場と化してしまい、ロシアは新兵器を続々と投入しています。

たとえば、空爆ではドローンの大群とともに、イスカンデルなどの極超音速ミサイルを放ち、ウクライナに脅威を与えてきました。そして、そのイスカンデルを空中発射型にしたのが、「キンジャール」というミサイルです。

  • 基本性能:キンジャール(Kh-47M2)
重 量 4,300kg
全 長 7.2m
直 径 120cm
射 程 最大2,000km
速 度 最大マッハ10(時速12,350km)
価 格 約15〜16億円

キンジャールはロシア語で「短刀」の意味を持ち、音速の5倍以上で飛ぶ極超音速の空対地・空対艦ミサイルです。前述のとおり、地上発射型のイスカンデルに基づいて、航空機から発射できるように改造したところ、空中発射型の弾道ミサイル(ALBM)ができました。

イスカンデルは射程500kmですが、キンジャールは母機のミグ31から発射した場合、最大2,000km先まで攻撃できます。航空機で高高度まで運び、飛行速度に乗せて発射すれば、より遠くまで届く仕組みです。

発射後は弾道を描きながら、自身の航法装置とGPS機能で進み、最大マッハ10で直撃します。

キンジャール・ミサイル

なお、榴弾タイプの通常弾頭のほか、低出力の核弾頭を搭載できるため、「戦術核」として使用可能です。

戦術核は戦略核兵器と違って、相手国の破壊ではなく、戦場で敵を壊滅させるのが目的。核の威力を抑えている分、使う側の心理的ハードルは戦略核より低く、逆に抑止しづらいとも言われています。

性能は誇張されている?

そんなキンジャールはイスカンデルとともに、対NATOの核抑止と恫喝に使い、ロシアが誇る「無敵の打撃力」のひとつです。プーチン大統領によると、最大マッハ10で降り注ぎ、既存の防空兵器では迎撃できません。

しかし、ロシア側の喧伝とは違って、実際はイスカンデルの空中発射版にすぎず、「革命的な新兵器」とまではいえません。

マッハ5以上で迫りくる限り、「極超音速」の定義を満たすものの、運用中のイスカンデルと比べると、何か大きく進化したわけではなく、結局はイスカンデルの派生型に尽きます。

ロシア自身のアバンガルドなど、本来の極超音速兵器は速度のみならず、滑空飛行による予測不能な軌道を持ち、不規則な機動で防空側の予測を外します。

他方、キンジャールは基本的に弾道飛行を行い、高度な軌道変更能力はありません。確かに超音速で迎撃困難とはいえ、従来のような放物線で飛行する以上、軌道の予測自体は可能です(一応)。

撃墜で無敵神話は崩壊

ロシアはウクライナ侵攻にともなって、2022年3月に初めてキンジャールを撃ち、ウクライナ西部の地下軍事施設を破壊しました。

ロシア本土から目標を考えると、別に高価なキンジャールを使わずとも、他のミサイルでも破壊できたはずです。したがって、軍事的な合理性ではなく、政治的なデモンストレーションで放ち、世界にその威力をアピールしました。

その後、散発的にウクライナに撃ち込むものの、そこまで大きな戦果はあげておらず、2023年5月には初めて「迎撃」されました。

このとき、ウクライナはパトリオット・ミサイルで迎え撃ち、最大6発のキンジャールを撃墜したそうです。多少の誇張があるとはいえ、公開された残骸をふまえると、撃墜された事実は変わらず、少なくとも「無敵」ではなくなりました。

「無敵」ではなくなったキンジャール

結局のところ、キンジャールは速度こそ速いものの、軌道を自在には変えられず、パトリオットにとっては「想定内」でした。しかも、イギリス国防省の分析によると、あまり目標には命中しておらず、その精度も疑問視されてきました。

戦争中の宣伝合戦を考えると、どちらも鵜呑みにはできませんが、ロシアが豪語するほど「迎撃不能」ではなく、実際に撃墜されたのは事実です。

だからといって、無視できる兵器ではなく、その脅威に「誇張」は入っていても、決して「虚構」ではありません。

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