ノーベル平和賞を熱望
トランプ大統領は戦争・紛争への仲介を行い、自分は7〜8つの戦争を止めさせた、と自慢してきました。そこまで「和平の仲介人」を担い、自ら停戦を斡旋するのは、ノーベル平和賞が欲しいから。
これは本人が何度も口にしており、2025年の発表時期が近づくと、自分ほどの適任者はおらず、もらえないと「おかしい」と言いました。
このノーベル平和賞への想いは意外に強く、ロシア=ウクライナ戦争の停戦を急ぎ、ガザ侵攻の解決を焦り、次々と紛争に首を突っ込む姿を見る限り、その執着心の強さがうかがえます。
他者に尊敬されたいから
では、なぜノーベル平和賞がほしいのか?
ひとつは別記事で書いたとおり、「尊敬されたい気持ち」があるから。
トランプは自尊心が強く、常に他人の尊敬を求めてきました。何かを受賞すると箔がつき、その分野では尊敬を集めます。
だからこそ、何かを受賞することにこだわり、ゴールド好きの嗜好も合わさって、金色のメダル・トロフィーを送ると、分かりやすいぐらい喜びます。
当然、ノーベル平和賞は最高峰の権威にあたり、受賞者はリスペクトの対象です。過激な言動で毀誉褒貶が激しく、あまり「平和」のイメージがないところ、ノーベル平和賞を受賞すれば、トランプの評価はそれなりに変わります。
オバマがもらったから
さらなる理由として、オバマ・元大統領への「対抗心」があります。
そもそも、トランプが大統領選に出馬したのは、オバマの「いじり」が原因のひとつです。
2011年のホワイトハウスの晩餐会において、オバマがトランプの面前で彼をいじり、恥をかかせました。
この晩餐会はトランプに限らず、辛辣な冗談を言い合い、みんなをいじり倒す、いわば英語で「Roast」する恒例行事ですが、トランプはとても腹が立ったそうです。
当時の映像を見ると、苦笑いしているものの、目は笑っておらず、内心では怒っています。このときの屈辱を忘れず、オバマと笑った人々を見返すべく、大統領選で勝ち上がり、ずっと根に持っています。
そのオバマは「核なき世界」を唱えた結果、2008年にノーベル平和賞をもらい、世界史に名を刻みました。自尊心と我の強い性格を考えると、因縁の相手が受賞した事実は重く、執着するのも無理ありません。
ものすごく単純、幼稚な理由なれど、大統領も人間である以上、個人の感情である程度は動き、あのトランプはなおさらです。
たまに見せる人道主義の顔
なお、破天荒な言葉とは違って、トランプ自身は軍事力の行使を好まず、死活的利益を守るときのみ、限定的に介入する傾向があります。
アメリカの利益にならず、無駄に死人が出る介入はせず、世界の警察官ではないとのスタンスです。この考えはMAGA支持層のウケがよく、戦争しないことを公約を掲げながら、大統領選に勝ってきました。
ちなみに、イランとの戦争は例外にあたり、トランプらしからぬ決断ですが、ネタニヤフ首相(イスラエル)の口車に乗り、彼にダマされたのが実態のようです。初日でイランの指導部を吹き飛ばすも、想定以上に戦争は長期化してしまい、トランプは「すでに勝った」と言い張りながら、出口を模索するようになりました。
また、本来は非介入主義にもかかわらず、意外に人道主義的な一面を持ち、特に民間人の被害には敏感です。あまりに人道的に見過ごせない場合、一転して軍事力を行使します。
たとえば、シリアでアサド政権が化学兵器を使うと、その空軍基地に懲罰的な空爆を行い、ロシアがウクライナに対する空爆を強めると、方針転換して軍事支援に同意しました。
このあたりは善人の部分が目立ち、特に家族からの影響も大きいとされています。シリア空爆では娘のイバンカ、ウクライナ支援では妻のメラニアが関わり、親しい家族からの「お願い」には弱いです。
異常な執着心と未練
さて、ご存知のとおり、ノーベル平和賞(2025年)はトランプではなく、ベネズエラの野党指導者マリア・マチャドがもらい、トランプはノーベル委員会を批判しながら、深い失望を表明しました。
本来は自分がもらうべきと言い、マチャド氏の支持を取り消すなど、異常なまでの執着心を見せます。その後、マチャド氏はトランプにメダルを送り、ご機嫌を取ろうとしますが。
また、FIFAからは謎の平和賞を受け取り、「ノーベル賞より素晴らしい」と強がったり、ノーベル委員会が私設団体にもかかわらず、ノルウェー政府に批判を浴びせました。
そして、ノーベル平和賞の受賞を逃すと、仲介に対する本人の意欲が落ち込み、各地の停戦交渉が進まなくなりました。もちろん、これは仲介人のやる気だけではなく、紛争当事者にも原因はあるものの、平和賞の発表前とそれ以降を見ると、明らかにトランプの熱意が違います。
むしろ、平和賞がもらえないと分かったからか、2026年1月にはベネズエラに攻め込み、マドゥロ大統領を拉致・拘束したほか、2月にはイランと戦争を始めてしまい、なりふり構わなくなりました。
一連の出来事をふまえると、ノーベル平和賞をあげていれば、受賞の名誉と資格を守るべく、戦争を始めなかったかもしれません。
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