対叛乱・対テロ用の安いプロペラ機
超音速飛行するジェット機やレーダーに映りづらいステルス機が各国で使われているなか、あえてこれに逆行する低速のプロペラ機を導入するケースがあります。
それが「COIN機」と呼ばれる軽攻撃機で、ゲリラやテロリストのような非正規戦を任務とする機体です。
「Counter Insurgency(対叛乱)」の略称であるCOINは、反政府勢力に対して政府側が国内の治安維持を目的に行う軍事作戦を指し、発展途上国が舞台になりがちです。
こうした国は経済的余裕がないものの、ゲリラなどに対してはジェット戦闘機は逆にオーバースペックであり、むしろ低速なCOIN機の方が役立ちます。まともな防空能力を持たない相手に投入するCOIN機は、高性能なレーダーやコンピューターは搭載しておらず、武装についても機銃や爆弾、ロケット弾ぐらいです。
よって、低スペックで安い練習機を改造するだけでよく、あまり練度の高くないパイロットでも運用できます。戦闘機と比べてスペックが低い分、発展途上国でも手が出せる値段になっていて、例えば「F-16戦闘機」が90億円するのに対して、COIN機の相場は20〜30億円あたりです。
この安さと対叛乱に十分応えられる性能から、東南アジアと中・南米諸国を中心に反政府組織や麻薬組織の掃討任務に使われてきました。
先進国ではほとんど必要ない
わざわざ高価なジェット戦闘機を使うまでもない場面では重宝されるCOIN機ですが、低速がゆえに対空機関砲や地対空ミサイルの餌食になりやすく、あくまで非正規戦向けの装備です。
相手が「スティンガー」のような携帯式地対空ミサイルでも持っていれば、COIN機の利点が一気に災いして致命傷になります。
そのため、先進国でCOIN機を運用する国は少なく、もしCOIN作戦が必要となったときは攻撃ヘリや無人攻撃機の出番になるでしょう。とはいえ、世界一の航空戦力を誇るアメリカも実はCOIN機を使ってきた歴史を持ちます。
これはゲリラ戦に苦しんだベトナム戦争で「OV-10」というCOIN機を使ったり、最近もアフガニスタンとイラクでの対テロ戦争でCOIN機の有効性に改めて着目しました。
では、日本はどうでしょうか?
結論から言うといりません。
先ほども述べたように、COIN機はそもそも国内の情勢不安に悩む国に向けた機種で、日本のように内戦の心配がない国には必要ありません。
しかも、アメリカのように海外派兵してまで対テロ戦・対ゲリラ戦を行う可能性もなく、導入しても持て余すだけです。
パイロット不足に直面する自衛隊は、攻撃ヘリの廃止と無人機配備を進めている最中であり、新たにCOIN機まで導入する余裕はありません。
一方、日本が東南アジアなど他国のCOIN能力を支援する意義はあります。
中・南米における麻薬組織の暗躍や中東地域でのテロ活動は、巡り巡って日本にまで悪影響を及ぼしかねず、地域安定化のためには先進諸国による現地政府の支援が必要だったりします。
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