海上保安庁の知られざる規模や役割、自衛隊との違いは?

海上保安庁
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その組織・予算規模

日本は国土面積こそ世界61位ですが、四方を囲む海洋面積で比較した場合、6位にまで順位が上がります。この海洋面積は領海に加えて、開発できる排他的経済水域(EEZ)を含み、水産物と海底資源が眠る重要な資産です。

海の資産を守るには違法操業や密輸、その他の犯罪を取り締まり、海難事故に対処しながら、治安と安全を確保せねばなりません。

海上保安庁が24時間体制で警戒を担い、世界6位の海洋面積を守っているものの、実際の組織規模はどんな感じなのか?

ざっくり説明すると、海保は人員1.47万人、艦艇386隻、航空機97機を誇り、2027年度の予算は約3,448億円です。

同じ海を守る海上自衛隊に比べると、1/3以下の人員と15%程度の予算であり、国土の約12倍はある海洋面積はもちろん、その権益を守るには足りません。

護衛艦と巡視船(出典:海上自衛隊)

他方、近年は中国の海洋進出にともなって、海保は右肩上がりで予算の増額が進み、「れいめい型」などの大型巡視船を量産しています。

3,000トン級の巡視船に限っても、海保は20隻以上を保有しており、質・量ともに最強レベルの沿岸警備隊です。

世界12位の「海軍」とされるアメリカ沿岸警備隊、爆増中の中国海警局がおかしいだけで、世界的には決して見劣りしません。

むしろ、正面装備と能力ではトップ5に入り、会場における世界有数の準軍事組織です。

軍隊の海自、警察の海保

海上保安庁といえば、海上自衛隊と比較されがちですが、防衛省の管轄下にある海自と違って、海保は国土交通省に所属する別組織です。

両者は同じ海の組織といえども、海保は治安維持と海上の安全確保を担い、海自は「防衛」を主任務としてきました。「海自=軍隊、海保=警察」の構図に近く、実際に海保は警察機関(法執行機関)です。

海上自衛官とは異なり、海上保安官は「特別司法警察員」にあたり、逮捕・捜査権を持っています。そのため、海賊対策では海自の護衛艦に乗り込み、自衛官に代わって逮捕権を行使する形です。

海自と海保の訓練(出典:海上自衛隊)

なお、警察機関という立場である以上、1948年の発足時から「非軍事」の意識が強く、海上保安庁法の第25条においても、軍事組織ではない旨が記されています。

一方、外国の沿岸警備隊に目を移すと、その多くは事実上の軍事組織、あるいはそれに準ずる組織として扱い、海保とは少し性質が異なります。

ただし、海保が国内屈指の実力組織である限り、少なからず軍事的性格は帯びてしまい、軍事とは完全には切り離せません。しかも、有事では自衛隊法に基づいて、国土交通省から一時離脱したあと、防衛大臣の指揮下に組み込めます。

準軍事化する利点はない?

このような性質・事情を受けて、海保を海自とともに防衛省の下に置き、準軍事組織にすべきとの声がありますが、そこまでするメリットはありません。

まず、「非軍事性」を強調したとはいえ、別に軍事活動は禁止しておらず、海自とは共同訓練で連携してきました。

たしかに、近年は武装漁民・工作船・テロ対応など、軍隊と警察の対処範囲が被りやすく、同じ管轄だと好都合かもしれません。

海保巡視船に着艦する海自ヘリ(出典:海上自衛隊)

しかし、国土交通省で活動してきたうえ、日本有数の実力組織である点は変わらず、省益と役人の抵抗を乗り越えながら、1.47万人の大組織を移管せねばなりません。

さらに、「第二の海自」と化す以上、海保側の反発と士気低下を招き、海自との関係も悪化するでしょう。

そもそも、現状の問題点を整理すると、組織としての立ち位置ではなく、人員・装備・予算の拡充が課題です。

人手不足(特に船員)の解消、さらなる能力強化に比べると、海保の準軍事化は優先順位が低く、わざわざ政治的なリソースを使ってまで、いま取り組むべき案件とは思えません。

非軍事だからできること

逆に軍事組織ではないからこそ、享受できるメリットがあります。

それは外国との対立において、緊張レベルを抑えられる点です。

たとえば、尖閣諸島沖では中国公船が現れたあげく、海保との対峙が常態化していますが、事実上の軍隊である海自が繰り出せば、中国も同様に軍艦を出すしかなく、対立のレベルが一気に高まります。

これが警察機関の海保であれば、中国海警局と同格の対立レベルで済み、さらなる事態の悪化を防げるわけです。

軍隊と警察では全く意味合いが異なり、いきなり軍隊を投入するよりも、警察を使った方が事態を収拾しやすく、エスカレーションを抑えられます。

また、あくまで警察組織だからこそ、他国とも連携をとりやすく、いたずらに仮想敵を刺激しません。同じ対中国での連携が目的でも、まずは海保レベルから始めれば、ある程度は反発を回避できます。

海難救助訓練という名目で送れば、さすがの中国もそこまで反対できず、それを絶好の隠れ蓑にしながら、しれっと協力・連携を進める形です。

たとえば、日本と台湾は正式な国交がなく、絶対に自衛隊を派遣できないなか、海保との救難・捜索訓練であれば、ギリギリ許されるレベルといえます。

すでに台湾の海上警察とは共同訓練を行い、日台間では珍しい協力を試みてきました。軍事レベルへの拡大は難しいものの、最初の一歩としては意義を持ち、協力関係の突破口自体は開きました。

すなわち、海保は軍隊より何かとハードルが低く、センシティブな状況下においても、他国と連携しやすい便利な存在です。

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