本格配備された国産型
自衛隊ではアメリカからの供与兵器で始まり、徐々に国産装備に移るケースが多かったですが、これは自走榴弾砲も同じでした。
アメリカ製を長年使ったあと、1970年代には「74式自走105mm榴弾砲」が登場しました。ところが、105mm砲では威力不足とされたため、74式自走砲は20両しか配備されず、本格量産はしていません。
一方、同時期に登場しながらも、最終的に201両も生産されたのが「75式自走155mmr榴弾砲」です。
- 基本性能:75式自走155mmr榴弾砲
重 量 | 25.3t |
全 長 | 7.79m |
全 幅 | 2.98m |
全 高 | 2.55m |
乗 員 | 6名 |
速 度 | 時速47km |
行動距離 | 約300km |
兵 装 | 155mm榴弾砲×1 12.7mm機関銃×1 |
75式自走砲はアルミ合金製の車体を持ち、当時の世界的な動向に合わせるべく、より大きい155mm榴弾砲を採用しました。その分、74式自走砲より乗員数が2人多く、搭載弾薬も28発に減っています(74式は43発)。
一方、74式にない自動装填装置がついていますが、これは当時としては珍しく、装薬部分は手動装填ながらも、毎分6発という射撃速度をもたらしました。
74式自走砲の毎分10発には劣るとはいえ、砲弾のサイズ・重さの差を考えると、申し分ない性能といえます。そして、砲の大型化にともない、その射程距離は74式より約4.5〜5km長く、最大19km先まで届きました。
外見上は74式と似ていますが、75式自走砲の方が少し大きいうえ、重量も9トンほど増えました。
ただ、鈍重そうな見た目にもかかわらず、じつは細かい操作性を誇り、たとえ狭い場所であっても、簡単に方向転換できたり、そのまま進入できます。こうした機動性からか、乗員の評判は決して悪くなかったそうです。
また、74式戦車や73式装甲車に随伴すべく、エンジンの主要部分は共通化を行い、性能を合わせるとともに、現場で整備しやすくしました。
99式の少数調達で退役延長
初めて本格配備された国産自走砲という意味では、75式自走砲の歴史的役割は大きく、その性能も悪くありませんでした。
しかしながら、201両という数は全国配備には足りず、対ソ連に備えるべく、北海道の特科部隊に集中配備されました。よって、本州以南ではほとんど見られず、各駐屯地で展示されている現在の方が見かけやすいです。
調達自体は1977年から1985年まで続き、本来は99式自走155mm榴弾砲にあとを託すはずでした。
それが冷戦終結とソ連崩壊後の軍縮機運を受けて、99式自走砲の調達数はふるわず、その単価はさらに上がりました。ここに火砲の定数削減も加わったところ、99式自走砲の生産数は136両に終わり、75式自走砲の退役は2016年まで延びました。
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