どうして日本はウクライナを支援すべきか?

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敵の敵は味方である

一方、「リアリズム」に視点を移すと、別の意義も見えてきます。

ロシアは北方領土を占拠しながら、軍用機を常に飛ばしてくるなど、日本の仮想敵です。逆にロシア側から見ても、アメリカと同盟を結ぶ日本は仮想敵です。

これらをふまえると、ウクライナは日本の仮想敵と戦う間接的な味方になります。まさに「敵の敵は味方」であって、国際社会の残酷な現実です。

ロシアはウクライナ侵攻で20万人の兵士、戦車・装甲車は数千単位で失いました。ソ連崩壊以降に再建した装甲戦力はなくなり、ソ連時代の遺産さえ底を尽きました。もはや極東方面に向ける余力はなく、当面は北海道侵攻なんて無理です。

露骨な言い方をすれば、ロシアがウクライナで損耗するほど、日本の北方の脅威は薄くなり、対中国に戦力をあてやすくなります。

日本人は支援に前向き?

ここまでは理念と価値観、リアリズムに触れながら、支援すべき理由を解説してきました。ところが、日本人は支援自体には前向きであり、2024年2月の世論調査において、政府の支援策を評価したのは63%、評価しなかったのは26%でした。

主に復興支援策を指すとはいえ、アジア諸国では高い数値を誇り、支援疲れが目立つ欧米と比べても、ウクライナ支持の姿勢が一貫しています。もちろん、日本はあまり軍事支援ができず、欧米とは一概には比較できません。

それでも、日本は戦争初期からウクライナ支持が強く、いわゆる「親露派」の主張は浸透していません。なぜなのでしょうか?

ひとつ思い当たるのは、歴史的背景によるロシアへの不信感です。同じ隣国でありながら、ロシアは中韓より関係性が薄く、「近くて遠い国」と表現されるように、その印象は好意的とはいえません。

これは日露戦争での対露恐怖から始まり、中立条約の破棄と対日侵攻、シベリア抑留、冷戦期の対峙、北方領土問題などが原因でしょう。

潜在的な不信感があるなか、ウクライナ侵攻という暴挙が加わり、戦後日本の価値観に真っ向から挑戦しました。先の大戦の反省からか、現代日本人には民主主義、平和主義の価値観が根付き、これを脅かすものは無意識に嫌悪します。

ゆえに、大多数は政治的には中道を好み、極端な政治勢力はその左右を問わず、多くの議席は望めません。ある意味、戦後日本人は現実的な信条を持ち、急進的思想や大衆運動を忌避した結果、いまや希少な安定した民主主義国家になりました。

まさに戦後教育の賜物ですが、ウクライナ侵攻は信条的、あるいは理念的に相容れず、自然とウクライナ支持につながった形です。

不思議なロシア擁護論

ところで、日本はどっちにもつかず、ロシアとウクライナを仲介しながら、外交で解決すべきとの声があります。しかし、ウクライナが徹底抗戦の意志を持ち、戦い続けるための支援を望む以上、うわべだけの平和を押し付けても意味がなく、むしろ相手の意向を無視したものです。

そもそも、ロシアはアメリカを交渉相手としか見ておらず、日本など眼中にありません。北方領土問題さえ解決できず、仮想敵(アメリカの同盟国)であることを考えると、日本に戦争の仲介人など務まりません。

もっとタチが悪いのは、「どうせ勝てないから」との理由から、ウクライナ側に停戦・降伏を促す意見です。これは戦争継続の責任を侵略者ではなく、なぜか加害者に見出す悪質なもので、先述の弱肉強食につながりかねません。

「どうせ勝てない理論」を使えば、日中戦争では中国がさっさと降伏すべきだったとなるでしょう。しかし、歴史はその逆を証明しています。

苦しい展開のなかでも、中国は抵抗を続けたがゆえに、日本の侵略に打ち勝ち、これを間違いと思う中国人はいません。

いくら複雑な過程、事情があっても、現代は軍事侵略した時点では「アウト」なのです。ロシアにはロシアの言い分があるでしょうが、それは侵略の免罪符にはなりません。

再び日中戦争に言及すると、日本は多くの地域を占領しましたが、日本人の居留民保護も名目のひとつでした。だからと言って、日本の中国侵攻は正当化されておらず、同じ基準はロシアにも適用されます。

このあたりの整合性がとれない限り、ロシア擁護はさすがに無理があります。

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