非正規戦向けの機体
F-35のようなステルス機の配備が進むなか、アメリカ空軍は「OA-1K」という軽攻撃機を購入しました。特殊作戦軍に75機が配備されますが、主に偵察や地上監視に使うことから、実際には武装偵察機といえるでしょう。
農薬散布機を改造したため、低速・安価という特徴を持ち、いわゆる非正規戦には適しています。種別的にはCOIN機(対叛乱専用機)になり、本来は対テロ・対ゲリラなどの非対称戦に使う想定です。
また、対ゲリラという関係からか、ベトナム戦争時の「A-1スカイレイダー」から名前を引き継ぎ、「スカイレイダーII」と命名されました。
- 基本性能:OA-1K スカイレイダー II
全 長 | 11.4m |
全 幅 | 18.06m |
全 高 | 4m |
乗 員 | 2名 |
速 度 | 時速390km |
航続距離 | 約2,400km |
高 度 | 約4,000m |
兵 装 | 12.7mm機関砲 誘導爆弾、ロケット弾など |
価 格 | 約50億円 |
OA-1Kは約6時間飛びながら、地上の動向に目を光らせますが、軽攻撃機でもある以上、最大2,700kgもの兵器を搭載できます。その種類は誘導爆弾からロケット弾、対戦車ミサイルにまでおよび、運用の柔軟性では他の攻撃機に劣りません。
レシプロ機の古い印象と違って、「中身」も高性能化を図ったところ、デジタル・コックピットに加えて、リアルタイムでの情報共有機能を確保しました。
なお、昔の航空機と同じく、機体尾部に車輪が付いており、未舗装の滑走路でも支えるほか、短距離での離着陸能力を備えています。
これはインフラの遅れた地域では有利に働き、活動拠点の選択肢を広げました。しかも、機体そのものはC-17輸送機に収まり、到着後は1日以内で組み立てられます。
いまさら必要ない?
ところで、なぜアメリカに新しいCOIN機がいるのか?
主な理由として、メキシコ国境で不法入国と薬物流入に悩み、これらの問題に対応すべく、長時間滞空できる安い機体がいるからです。ほかにも、中・南米やアフリカでの監視任務に使い、現地政府を支援するとはいえ、その導入はアメリカでも疑問視されています。
すでに米軍は対テロ戦ではなく、対中国に向けた正規戦に戻り、COIN機の需要は大きく下がりました。少なくとも、75機も新規購入する理由はあまりありません。
OA-1KスカイレイダーⅡ(出典:アメリカ空軍)
ベトナム戦争ではジャングル戦に対処すべく、数百機単位のA-1が運用されましたが、対中国ではゲリラ戦が起きるとは思えず、正規戦では低速のCOIN機は撃墜されるだけです。
不要とはまで言わずとも、以前ほどの必要性は見当たらず、国境監視任務も別の機体で代替可能です。途上国の能力強化でいえば、いまやアメリカの関与は間接的な支援に傾き、アフガニスタンからも撤退した以上、新しいCOIN機の活躍機会は多くありません。
情報収集や警戒監視に使えるとはいえ、わざわざ導入する根拠としては弱く、トランプ政権下で予算見直しが進むなか、「50億円×75機」の有効性が問われるでしょう。

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