なぜGDP比で2〜3%?日本の防衛費の推移とその行方

自衛隊
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わずか数年で倍増

日本周辺を含む世界情勢が悪化するなか、自衛隊の能力強化と戦力向上を図るべく、日本は防衛政策を大転換させました。

その一環として、防衛費の増額があげられますが、わずか数年で1.5倍まで増えており、まもなく「倍増」する見込みです。

第二次安倍政権の発足以降、日本の防衛費は徐々に伸びたものの、2022年頃までは5兆円台にとどまり、GDP比(国内総生産に占める割合)では1%程度でした。

ところが、岸田政権下で加速的に伸び、2023年には6.8兆円、2024年には7.7兆円になりました。そして、2025年度は8.5兆円になり、関連予算(後述)と補正予算も含めると、約9.9兆円にのぼります。

GDP比では1.8%になったとはいえ、安全保障情勢と諸外国の動きに合わせて、当面は「2%」という目標を設定しました。このまま順調に推移すれば、2027年頃には達成する可能性が高く、戦後日本にとっては歴史的瞬間です。

「2%」の理由

では、なぜ「2%」なのでしょうか?

これは純粋な防衛力強化に加えて、政治的意思を示す意味合いが強く、他国と足並みをそろえる意図があります。

そこにはアメリカからの圧力が否めず、トランプ政権は同盟国に強い不満を持ち、以前から負担増を求めてきました。その矛先はNATOに向きがちとはいえ、日本にも不満があるのは変わらず、現状では納得してくれません。

NATOにせよ、アジア諸国にせよ、中露と直接対峙するにもかかわらず、少ない比率なのが許せないわけです。アメリカの軍事費が「3.5%」なのに対して、最前線の国がそれより少ないと、アメリカ国民に示しがつきません。

特に欧州では長らく軍縮政策が続き、全体的に対ロシアの備えを怠るなど、トランプの怒りを買いました。それゆえ、トランプは最初からNATOには厳しく、加盟国は「2%以上」を達成しない限り、アメリカは守らないとさえ脅しました。

一方、故・安倍首相の尽力が効いたのか、日本に対してはそこまで求めず、なんとかやり過ごしてきました。トランプ本人はもちろん、アメリカとしても対中国に専念したいなか、最重要同盟国の日本を「敵」には回せず、頭ごなしの要求は避けた形です。

逆にいえば、日本の扱いを気をつけねばならないほど、アメリカは対中国で余裕がなく、それだけ事態が切迫している証でしょう。

日本も近隣に中国、北朝鮮、ロシアがいる以上、それなりの防衛力を整えねばならず、アメリカの不満をやわらげるためにも、結局は2%の目標を設定しました。

それは防衛上の必要性に加えて、将来のさらなる要求に備えた実績づくりでした。いずれ迫られることを予期して、あらかじめ2%に向けて動いておき、一定の反論・説得材料に使いながら、交渉の余地を見出そうというものです。

また、国内向けには事前に慣らす目的があって、3〜5%を目指すときの衝撃を軽減します。仮に3〜5%を余儀なくされた場合、2%からのスタートと、1%台からの出発ではハードルが違います。

残念ながら、第二次トランプ政権で猶予期間は終わり、日本もNATO諸国に近い扱いを受けるはずです。

非公式に「3.5%」を求められたほか、国防総省はアジア勢に「5%」を要求しました。NATOへの要求を5%に引き上げて、NATO側も了承したことを考えると、もはや日本も逃げられません。

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