中華イージス誕生の物語
イージス艦といえば、本家・アメリカのシステムが有名ですが、中国も同様の防空システムに取り組み、「中華イージス」を運用してきました。
中国語では「中華神盾」と書き、ギリシア神話に出てくる神の盾、イージスをそのまま訳した感じです。
いくつかの種類があるなか、蘭州級駆逐艦は初代・中華イージスにあたり、米海軍の「アーレイ・バーク級」を模倣したあと、2004年に登場しました。
ただし、NATOでは「旅洋II型(ルヤンII型)」と呼び、中国側の正式名称は「052C型」です。
- 基本性能:蘭州級(052C型)駆逐艦
| 排水量 | 7,000t |
| 全 長 | 155m |
| 全 幅 | 17m |
| 乗 員 | 280名 |
| 速 力 | 29ノット(時速54km) |
| 航続距離 | 約8,300km |
| 兵 装 | 100mm砲×1 30mm CIWS×2 対空ミサイル×48 対艦ミサイル×8 対潜魚雷×6 |
| 艦載機 | 哨戒ヘリ×1 |
| 建造費 | 約1,000億円 |
その開発経緯をふり返ると、1995年の第三次台湾海峡危機において、米海軍に圧倒的な差を見せつけられた結果、対抗手段のひとつとして建造しました。
「屈辱」から生まれた格好ですが、それまでの中国艦とは違って、艦橋の四方に固定式のレーダーを置き、日米のイージス艦とよく似ています。
これは本家の「AN/SPY-1レーダー」と変わらず、死角とタイムラグをなくしながら、360度の同時監視能力を確保しました。あくまで推測なれど、本家に近い捜索範囲を持ち、300km先の目標を捕捉しながら、10個以上の目標を同時対処できます。
アメリカにスパイを送り込み、諜報活動で機密情報を得たり、技術者を引く抜いたことを考えると、オリジナルに似た性能になるでしょう。
他方、蘭州級は垂直発射システム(VLS)ではなく、六角形の回転式ランチャーを使い、これを艦の前方に6基、後方に2基を配置しました。
それぞれ6発のミサイルが収まり、国産の「HHQ-9」を搭載していますが、これはソ連譲りの発射方式であるほか、HH-Q9もロシアの「S-300」がベースです。
ロシア由来といえども、中国が独自開発したところ、その射程は最大200kmまで伸び、長距離防空には申し分ありません。HHQ-9で撃ち漏らした場合、100mm単装砲・30mm CIWSの順に迎え撃ち、多層的な防空を行う仕組みです。
また、計8発の「YJ-12」対艦ミサイルを積み、マッハ2以上で約450km先まで届きます。これは「ハープーン」より速く、2倍以上の射程を誇るため、日米にとっては大きな脅威でしょう。
逆に対潜能力は限定されており、ソナーと短魚雷はあるものの、アスロックのような対潜兵器は持たず、もっぱら艦載の哨戒ヘリに頼ります。
本家・アメリカとの比較
中国初の長距離防空艦とはいえ、やはりアメリカのイージス艦に比べると、探知と迎撃の精度では敵わず、回転式の発射機は速射性・整備性で劣ります。
また、アーレイ・バーク級が弾道弾を迎え撃ち、大気圏外で撃墜できるのに対して、蘭州級は弾道ミサイル防衛はできず、あくまで艦隊防空に専念する形です。
なによりも、中国海軍は実戦経験がほとんどなく、経験値では米海軍の足元に及びません。アメリカは長年にわたる実戦経験、先行者として技術蓄積があり、特に統合運用のノウハウは別格です。
システムとネットワークの連携、実戦データを反映したソフトウェア改修、リアルタイムの情報共有、指揮統制の統合レベルなど、他国とは「経験値」が違いすぎます。
直近の中東紛争だけでも、多数のドローン・ミサイルを迎撃しており、最新の教訓をふまえながら、イージス・システムのアルゴリズム、ソフトウェアを更新しました。
経験不足は日本も同じですが、経験豊かなアメリカと同盟を結び、同じシステムを運用している以上、少なくとも実戦を反映した更新、ノウハウの共有は期待できます。中国はそれすら期待できず、自分で何とかするしかありません。
つまり、外見は本家のイージス艦に近く、似たシステムを使うとはいえ、運用上のギャップは埋められず、ここが中華イージスの弱点でしょう。
国産化できた意義
それでも、蘭州級の意義はその能力よりも、中国が独自のイージス艦を造り、国産化できた点にあります。もともと実験的な意味合いが強く、建造と運用で改善点を洗い出したあと、次につなげる「試作艦」ともいえます。
実際に蘭州級の教訓に基づいて、発展型の「昆明級(052D型)」ではVLSを積み、ステルス性の強化やシステムの改良を行いました。しかも、蘭州級の建造数が6隻のところ、昆明級では量産体制を敷き、なんと33隻も大量建造しました。
この発展型だけに限っても、他国の海軍力に匹敵する数になり、それを15年足らずで整えたあげく、いまは次の「南昌型(055型)」を量産中です。
蘭州級以降の発展・量産ぶりを考えると、それが果たした役割は性能以上に大きく、中国海軍の近代化を実現するとともに、イージスの国産化を定着させました。
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