最新の中華イージス
中国海軍は2000年代から近代化に取り組み、イージス艦や空母を国産化してきました。中華イージスに限っても、改良を重ねながら量産が進み、その建造数は50隻を超えました。
そんな中華イージスのうち、「南昌級(055型)」は最新型にあたり、「アジア最強の軍艦」といわれています。
- 基本性能:南昌級(055型)駆逐艦
| 排水量 | 11,000t(基準) |
| 全 長 | 180m |
| 全 幅 | 20m |
| 乗 員 | 約300名 |
| 速 力 | 30ノット(時速56km) |
| 航続距離 | 約9,300km |
| 兵 装 | ・130mm砲×1 ・30mm CIWS×1 ・垂直発射基×112 長距離対空ミサイル 中距離対空ミサイル 対艦巡航ミサイル 対艦弾道ミサイル 対地巡航ミサイル 対潜ロケット ・24連装SAM発射機×1 ・対潜短魚雷×6 ・デコイ発射機など |
| 艦載機 | 哨戒ヘリなど×2 |
| 建造費 | 約1,450億円 |
まず、055型は駆逐艦といえども、基準排水量は1万1,000トンを超えており、もはや巡洋艦に匹敵する規模です。実際にNATOでは「レンハイ型巡洋艦」と呼び、アメリカもミサイル巡洋艦として扱っています。
そのアメリカの「アーレイ・バーク級」と比べても、約1.2倍の大きさと発射装置(VLS)を持ち、将来のアップグレードに備えて、高い拡張性を確保しました。
設計面ではステルス性の強化を狙い、レーダー反射面積を減らすとともに、水中雑音や赤外線の放射も抑えています。
その結果、1万トン超えの船体にもかかわらず、良好なステルス性を誇り、溶接加工のデジタル化、平面設計の多用で量産性も向上しました。
2020年から配備が始まり、すでに10隻が就役しているなか、残り4隻の建造も順調に進み、最終的には16隻を建造予定です。すなわち、055型だけで日本のイージス保有数を上回り、中国海軍の戦力をさらに押し上げます。
充実したシステムと兵装
初代・中華イージスの「蘭州級」、続く「昆明級」で蓄えた経験・技術を注ぎ込み、ひとつの集大成として仕上がりました。
それまでの中華イージスと違って、新たにデュアルバンドレーダーを使い、異なる周波数帯(Sバンド・Xバンド)を統合運用しながら、それぞれの特性を使い分けられます。
たとえば、Sバンドで遠距離の空中目標を、Xバンドで低空の小型目標を追い、探知精度を引き上げました。同時に捜索範囲は約60%も伸び、ステルス機の探知能力も高めたため、最新の脅威にも対抗できるそうです。
中国独自のイージス・システムとはいえ、広範囲の目標探知・追尾に加えて、複数の目標に同時対処できます。112セルものVLSがあるうえ、それぞれが西側のMk.41より大きいため、ミサイル搭載数は日米のイージス艦を上回るそうです。
このVLSは汎用性が高く、対空・対艦・対潜・対地など、いろんなミサイルを運用できます。
まず、対空戦闘では長距離の「HHQ-9B(射程:200km)」、中距離の「HHQ-16B(射程:70km)」を順に放ち、広域の艦隊防空を行う仕組みです。
これらが撃ち漏らした場合、24連装の「HHQ-10(射程:10km)」、130mm速射砲、30mm CIWSで迎え撃ち、防空網に厚みを持たせました。ここに新式の電子妨害システム、複数のデコイ発射機が加わり、ソフト面の防御能力も強化しました。
次に攻撃能力を見ると、新たに「YJ-21」対艦弾道ミサイルを使うほか、開発中のレールガン、レーザー兵器を盛り込み、試験運用する動きがあります。
イージス艦として防空に重点を置き、攻撃能力を強化したといえども、対潜用に短魚雷と対潜ロケット、哨戒ヘリも搭載しており、バランスを取りました。
1.1万トンの船体規模、ミサイル搭載数の多さ、攻撃能力の高さをふまえて、「アジア最強」と評されやすく、大きな脅威には違いありません。
空母打撃群の「盾と剣」
船体規模が大きくなった分、055型は外洋航行性が高く、空母に随伴しやすくなりました。したがって、055型は空母打撃群の中核を担い、空母を守りながら敵を攻撃する、いわば「盾と剣」の両方を期待されています。
また、対空・対地・対艦・対潜の各分野において、統合指揮の役目を果たすべく、最新の戦闘指揮システム、データリンク機能を組み込み、共同交戦能力(CEC)も獲得しました。
これは日本の「まや型」に匹敵するものの、指揮・統制の部分は改善の余地が残り、ここが055型の弱点とされています。ただ、中国海軍の進化ペースを考えると、早々に統合指揮能力でも追いつき、再びアップグレードするでしょう。
西側諸国より情報の透明性がなく、いまだ未知の部分が多いとはいえ、055型は同時対処能力、高い総合戦闘力を持ち、まさに中国海軍の最高到達点です。
しかし、アメリカのイージス艦と違って、中華イージスは実戦経験がなく、本当に通用するか分かりません。中国海軍の艦艇に限らず、中国の兵装は大元をたどると、ロシア由来(旧ソ連)のものが多く、ここが一種の不安要素です。
ウクライナ侵攻を見ても分かるとおり、ロシア兵器の性能は予想を下回り、西側に劣後すると暴露されました。
中国独自の改良・進化を加えても、どこまで西側に追いつき、追い越せたかは分からず、多少の誇張が入っているはずです。
敵を過小評価してはならず、055型も警戒してしかるべきですが、逆に過度な恐れは本質を見誤り、特に運用実績の蓄積、実戦経験の有無を加味すると、「アジア最強」を鵜呑みにはできません。
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