海自のTC-90練習機、LC-90連絡機が果たす役割

自衛隊
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フィリピンにも供与されたTC-90

空を守る航空自衛隊がパイロット育成に注力しているのは有名ですが、海上自衛隊も広大な海を監視するP-1哨戒機や哨戒ヘリ向けに搭乗員を育てなければなりません。

そのため、海自も独自の育成プログラムと練習機を持っていて、そのひとつが徳島県の第202教育航空隊で使われている「TC-90」です。

  • 基本性能:TC-90練習機/LC-90連絡機
全 長 10.8m
全 幅 15.3m
全 高 4.3m
乗 員 5名(LC-90は6名)
速 度 時速450km
航続距離 約2,000km
高 度 約9,000m
価 格 1機あたり約11億円

海自でパイロットを目指す場合、まずは航空学生として山口県・小月教育航空群で2年間の教育を受けます。その後、基礎的な飛行技量を習得するために「T-5練習機」に乗り、無事に合格したら次はより大型の「TC-90練習機」に進むわけです。

このTC-90はアメリカ製のビジネスジェットを練習用に改造したもので、調達自体は半世紀前の1974年に始まりました。しかし、老朽化した機体の更新分として現在も調達は続いており、約30機が徳島の教育航空隊に配備されています。

初期型と最新型では基本性能は変わらないものの、コックピット内の計器類と航法システムが新しくなっていたり、アンテナの形状とプロペラの枚数が異なります。

このTC-90はビジネスジェットをベースにしているだけあって、優れた操縦性と安定感を誇り、計器飛行の練習にはふさわしいといえます。また、最大5名まで乗れるうえ、簡易トイレもついているので、複数の学生による連続飛行も可能です。

学生は怒られながらこの練習機に半年近く乗った後、試験にパスすれば操縦士の国家資格を獲得できます。そして、TC-90を卒業したら、次はいよいよP-3C哨戒機のような実用機での訓練になります。

さて、今も新規調達が行われているTC-90ですが、中古品のうち5機がフィリピン海軍に供与されました。これは対中国を念頭に海洋監視能力を高めたいフィリピンの意向を受けたもので、当初は中古のP-3Cを希望していました。

しかし、大型のP-3Cは訓練と維持費の点で厳しいとみられ、より簡単で安く使えるTC-90に白羽の矢が立ちました。

練習機なので対潜哨戒能力などは持っておらず、目視による海洋監視を余儀なくされますが、今まで使っていた機体と比べて行動範囲が2倍に伸びたそうです。また、機体後部には監視用レーダーぐらいは積めるようで、このあたりは改造次第といったところでしょう。

いずれにせよ、あまり知られていないTC-90練習機が他国に供与された初の自衛隊装備品になりました。

基地間連絡に使うLC-90

練習機として使われているTC-90に対して、海自では派生型の「LC-90」というのも運用しています。

連絡輸送機の「LC-90」(出典:海上自衛隊)

こちらは人員・物資の輸送、基地間連絡を行う機体であり、陸上自衛隊のLR-2連絡偵察機と同様の役割を果たします。

計6機が導入されたこの連絡輸送機は、以前は海自にある5つの航空基地にそれぞれ配備されていましたが、現在は厚木基地に集約されました。少人数の高官を運ぶ際には使えるものの、連絡機の必要性が低下したことを考えると、今後は淘汰されるでしょう。

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