イギリスが誇る恐怖の槍、スター・ストリーク対空ミサイル

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超高速で放つ3本の槍

イギリスは変わった兵器を多くつくり、いまも独特の国産兵器を運用するなか、そのひとつに「スター・ストリーク」があります。

これは1980年代の近距離防空システムですが、通常の弾頭の代わりに槍状の子弾を放ち、この「ダーツ」を目標に当てて撃墜する仕組みです。

冷戦期にソ連の重武装な攻撃ヘリが登場すると、イギリス陸軍は従来の近距離ミサイルでは対抗できず、機動性と速力、射程で勝るシステムを求めました。

さまざまな紆余曲折を経験しながらも、なんとか誕生したスター・ストリークですが、その外見は3本のダーツが露出している変わったものでした。

タングステン合金製のダーツは超高速で射出したあと、弾頭そのものが運動エネルギー弾として働き、付随の高性能炸薬（450g）が機関砲並みの破壊力を発揮します。

しかも、炸薬は目標に当たったときではなく、少し遅れて起爆する遅延信管を使い、ダーツ本体の直撃後に時間差で追加ダメージを与えます。

発射されるスター・ストリーク（出典：イギリス軍）

また、相手を逃さない高速力を重視したところ、二段構えの燃焼ブースターを組み込み、最終加速時には最大マッハ3.5を発揮します。

同じ近距離防空システムで比較すると、スティンガー（米）のマッハ2.5より速く、狙われる側にとっては大きな脅威です。

二段目の燃焼が終了すると、先ほどのダーツが放たれるわけですが、マッハ3〜3.5の状態で発射される以上、そこには強力な運動エネルギーが加わり、どんな頑丈な航空機でも無事では済みません。

スター・ストリークの正式名称といえば、「High Velocity Missile（高速ミサイル）」が付きますが、まさにその実態を表した名前でしょう。

スター・ストリークは3連装発射機に収まり、戦場で持ち運んで設置しながら、備え付けレーザー照射器でロックオンします。このとき、3つのダーツは半径1.5mの間隔で飛び、2つのレーザーで目標まで誘導するそうです。

照準器で狙う兵士（出典：イギリス軍）

レーザー誘導方式は電波妨害、赤外線妨害には強い代わり、命中まで目標を照準器で追わねばならず、命中精度を上げるには訓練が欠かせません。

この点、撃ちっ放しタイプの方が使いやすく、実際の現場での扱いやすさでいえば、スター・ストリークは劣ってしまいます。

それでも、英国産の防空兵器として重宝されており、ひとりで使える携行式、車両搭載型に加えて、ヘリコプター・水上艦船向けのタイプがあります。このあたりはアメリカのスティンガーに近く、スター・ストリークは「英国版スティンガー」と呼べる兵器です。

12連装の車両搭載型（出典：イギリス軍）

スティンガーより扱いにくいものの、いろんなプラットフォームで使える柔軟性を持ち、イギリス以外では南アフリカ・タイ・インドネシア・マレーシアが導入しました。

そして、2022年にはロシアのウクライナ侵攻を受けて、ウクライナ側にまとまった数を供与した結果、ロシア軍のドローンや攻撃ヘリを撃墜してきました。