硬くて生存性重視
イスラエルという国は、その複雑な歴史のせいで周りがいつも敵だらけという状況に置かれてきました。このアラブ国家だらけの地域に孤立したユダヤ国家を守るため、常に軍事力強化に力を入れており、それは中東最強と称されるほどです。
そして、この軍事力を象徴する兵器としてよく登場するのが、国産の主力戦車「メルカバ」になります。
⚪︎基本性能:メルカバ戦車(Mk.4)
重 量 | 65t |
全 長 | 9.04m |
全 幅 | 3.72m |
全 高 | 2.7m |
乗 員 | 4名 |
速 度 | 時速64 km |
行動距離 | 約500km |
兵 装 | 120mm滑腔砲×1 12.7mm機関銃×1 7.62mm機関銃×1 60mm迫撃砲×1 |
価 格 | 1両あたり約8億円 |
1970年代に開発されたメルカバ戦車は、乗員の生存性を第一に考えた設計思想で知られており、いまでも世界トップクラスの防御力を持っています。
これは周辺国よりも人口が少ないイスラエルにとって、兵士の命がなによりも大事であるがゆえに生まれたもので、数で押し切るT-72戦車シリーズとは対照的です。
例えば、メルカバ戦車のエンジンは通常の車体後部ではなく、前部に配置されていますが、これは被弾時に乗員を守る装甲として機能します。代わりに撃ち合いではエンジンが被弾しやすくなりますが、走行不能になるリスクをとってでも、乗員の生存を優先しました。
一方、車体後部には脱出用のドアが設けられていて、砲弾などの搬入と負傷兵の収容にも使われてきました。
さらに、装甲自体も世界で最も「硬い」部類に入り、対戦車地雷やRPG-7などが使う成形炸薬弾に対して高い防御力を発揮できます。
こうした防御力はイスラエルが経験してきた各戦争の教訓も反映されており、近年は車体底部の装甲化(地雷対策)やモジュール装甲の採用、対ドローン用の保護ケージの設置などがみられます。
火力もアップグレード
さて、当初から生存性重視で作られたメルカバ戦車ですが、火力面では初期型とその次の「Mk.2」は105mmライフル砲を搭載していました。これは当時の主力戦車としては申し分なく、初陣となった1982年のレバノン戦争ではシリア軍のT72戦車を多く撃破しました。
ほかにも、内蔵タイプの60mm迫撃砲という珍しい武装を持ち、市街戦や戦車砲を使うまでもない攻撃に使われます。
1990年に登場したMk.3バージョンでは、車体・砲塔が新設計になるとともに、戦車砲は120mm滑腔砲に強化されました。その後、2004年にはさらに進化したMk.4が配備されて、現在のイスラエル軍における主力戦車となっています。
このMk.4は引き続き120mm滑腔砲を採用しつつも、射撃管制装置や戦闘統制システムを新しくして総合戦闘力を飛躍させました。迫撃砲も射程が伸びたほか、コンピューター制御式となり、主砲から撃つ対戦車ミサイルは戦闘ヘリすら撃墜できます。
また、Mk.4はエンジン出力の強化と新型変速機によって走破能力も向上させていて、イスラエルが重視してきたゴラン高原(対レバノン・対シリア)での機動展開性がさらによくなりました。
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