練習機改造の軽戦闘攻撃機
ロシアのウクライナ侵攻に危機感を募らせたポーランドが、韓国製のK2戦車やK9自走榴弾砲を爆買いしたことが話題になりました。ところが、これら陸上兵器のほかにも「FA-50」という軽戦闘/攻撃機も48機購入しました。
あまり馴染みがないこの軽攻撃機は、もともとアメリカから技術支援を受けて開発した超音速練習機の「T-50」を改造したものです。
そんな練習機改造の「FA-50」はリーズナブルな値段のわりには性能がよく、お手軽な航空戦力として評価されています。
⚪︎基本性能:FA-50軽戦闘/攻撃機
全 長 | 12.98m |
全 幅 | 9.17m |
全 高 | 4.78m |
乗 員 | 2名 |
速 度 | マッハ1.5(時速1,850km) |
航続距離 | 約1,850km |
高 度 | 14,630m |
兵 装 | 20mmバルカン砲×1 空対空ミサイル 空対地ミサイル ロケット弾、誘導爆弾 |
価 格 | 1機あたり約90億円 |
北朝鮮空軍と対峙する韓国空軍はF-15戦闘機やF-16戦闘機、そして最新のF-35ステルス戦闘機を保有している一方、長年の夢として国産開発も目指してきました。
しかし、戦闘機開発は技術的にも資金的にもハードルが高く、まずは練習機から始めるのが自然な流れです。そこで、前述のT-50高等練習機を開発したあと、これを軽攻撃機に改造して古くなった「F-5戦闘機」の後継として量産しました。
このFA-50軽戦闘/攻撃機は、練習機をベースにしたことで良好な操縦性を持ち、対空ミサイルや対地ミサイル、ロケット弾、JDAM誘導爆弾までのさまざまな武装を搭載できます。
地上部隊への航空支援や対北朝鮮軍の役割は十分に務まり、1機あたり約90億円という価格はお金に余裕のない中小国にとってかなり魅力的です。
フィリピンのFA-50(左)と自衛隊のF-15(右)(出典:航空自衛隊)
もちろん、性能面ではF-16戦闘機などには及ばないものの、そこまでの高性能機を求めていない国としては、安くて数も揃えやすいFA-50は有力候補に上がります。
実例として、財政的余裕がなく、旧式機体しかなかったフィリピン空軍が導入して久々の超音速機を手に入れました。
進化した「ブロック20」
こうしたなか、FA-50は改良による進化を遂げており、ポーランドに早期納入された「ブロック10」というバージョンは精密誘導能力とデータリンク能力を高めました。
さらに、今後登場する「ブロック20」では高性能な小型レーダー、ヘルメット内蔵型の照準機能を取り入れつつ、電子戦とデータリンクもさらに強化するつもりです。
特に新型レーダーの性能は、F-16戦闘機の最新型で使われているものと同等でありながら、その値段は半分以下になるとされています。
しかも、中距離空対空ミサイルの代名詞ともいえる「AMRAAM」の統合運用にも対応しているので、もはや通常戦闘機に匹敵する空戦能力を獲得します。
離陸する韓国空軍のFA-50(出典:韓国空軍)
対地攻撃においても、JSM対地ミサイルやタウルス巡航ミサイルなどの統合運用能力を盛り込み、「安くて、そこそこの性能」から「低価格なのに高性能」への進化を目指します。
こうした優れた費用対効果に加えて、韓国は輸出先の要求にも柔軟に対応するため、進化したFA-50は小型戦闘機の市場でシェアを拡大するでしょう。すでにポーランドとマレーシアがこの「ブロック20」を購入済みですが、この先も手をあげる国は増えそうです。
コメント