XM30歩兵戦闘車が目指す近未来像とは?

装甲戦闘車のイメージ図 アメリカ
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M2ブラッドレーの後継

戦車に随伴しながら、兵士を運んで火力支援も行う「歩兵戦闘車」は、現代陸軍にとっては必須装備のひとつであり、なかでも傑作扱いされているのがアメリカの「M2ブラッドレー」です。

しかし、このブラッドレーは4度の改修を施されたとはいえ、登場からすでに40年以上も経過しているため、約2,300億円を投じて「XM30歩兵戦闘車」という後継を開発します。

⚪︎基本情報(現時点):XM30歩兵戦闘車

重 量 不明
全 長 不明
全 幅 不明
全 高 不明
乗 員 2名+同乗6名
速 度 時速70km
行動距離 500km以上
兵 装 50mm機関砲×1
機関銃・擲弾発射器
対戦車ミサイル
徘徊型無人機
価 格 不明

「Lynx(リンクス)」と呼ばれるこの開発計画は、M1エイブラムス戦車を手がけたGDLS社とドイツのラインメタル社が担当しますが、早ければ2025年中には試作車両を完成させて、2029年からの部隊配備を目指します。

まだ詳細情報は少ないものの、同じラインメタル社が開発している次世代戦車「KF51パンター」と多くの類似点がみられます。

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まず、無人砲塔への完全刷新によって乗組員を1名減らしつつ、メイン武装の機関砲はこれまでの25mmから50mmへと大幅増強するつもりです。

この50mm機関砲への変更は射程延伸のみならず、デジタル化された索敵・射撃管制システムと組み合わせることで、相手を先に捉えてのアウトレンジ攻撃(射程圏外からの一方的攻撃)を実現しました。

しかも、システムそのものが高い識別・捕捉能力を持つことから、反応時間と操作要員の負担減少、確実な目標破壊を見込めます。

ほかにも、遠隔操作式の機関銃や擲弾発射器を砲塔上部に設置したり、ジャベリン対戦車ミサイルや小型無人機「コヨーテ」を発射する多目的ランチャーを付けられます。

この「コヨーテ」という徘徊型無人機は、偵察以外にも敵のドローンを迎撃する「C-UAS(カウンター・ドローン)」の役割もこなせるため、現代戦場では特に厄介な自爆ドローン対策にもなるでしょう。

防御力・機動力で生存性向上へ

砲塔の自動化・省人化で生まれたスペースには、最新の画像カメラや赤外線暗視装置、レーザー測距技術を盛り込み、全周360度の警戒監視能力を獲得しました。

これによってロックオンされたときは早期警戒警報と防御システムが発動され、乗組員を守りながら敵の位置情報を知らせます。

「XM30」のイメージ図(出典:ラインメタル社)

また、防護力には状況に合わせて増設可能なモジュール装甲を採用しており、これに散弾などを放つアクティブ防護装置、反応型の装甲、内張りの最終装甲を加えた多層構造になるそうです。

一方、過酷な地形でもM1エイブラムス戦車に随伴できるだけの機動性が確保されており、「脚回り」を含む車体下部は地雷やIED(即席爆弾)を考慮した設計となっています。

最新技術で適応力・対応力を強化

多様化する領域、流動的な戦場を想定した「XM30」は、最先端のセンサーおよびシステムで状況認識能力を高めつつ、友軍と連携する「ネットワーク型戦闘」と独立戦闘行動のどちらにも対応できる柔軟性を与えられます。

このようにデジタル化を通じた優位性、無人砲塔と多層防護力を持つ点では「KF51パンター戦車」に似ており、両者は同じ方向性を目指しているといえます。

あとは、開発計画が順調に進むかどうかがですが、いずれにせよ「XM30」は歩兵戦闘車におけるゲームチェンジャーになりそうです。

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