日本がフィリピンに国産レーダーを輸出したわけ

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探知能力が大幅向上

南シナ海で中国の圧力を受けているフィリピンは、対抗するための装備・能力が足りておらず、軍の近代化が急務となっています。こうしたなか、同じ対中国で利害が一致する日本との連携強化が図られ、2023年11月に日本産の防空監視レーダー「FPS-3」がフィリピンに初めて納入されました。

これは三菱電機が製作した固定式の警戒監視レーダーですが、武器輸出規制を緩和した2014年の「防衛装備移転三原則」以降では、完成品として初の海外輸出案件です。

記念すべき第1号となったこの「FPS-3」は南シナ海をにらむルソン島西部に配置され、さらに2基が納入予定です。最大探知距離は約460kmと推定され、既存レーダーサイトを補完するとともに、これまで把握できなかったエリアも監視可能になりました。

日本産レーダーの配置予定図と探知範囲

また、移動式防空レーダーも別で受注しており、全てそろえばフィリピン軍の探知能力は大きく強化されます。これは中国の動きを監視するのに役立つのみならず、輸出を通じて日比両国の安全保障関係も自然と強まるわけです。

フィリピン強化は日本の国益

今回の日本産レーダーはあくまで「輸出案件」になるものの、日本はフィリピンに対して装備品の「供与」も行っています。

例えば、海上自衛隊のTC-90練習機を譲渡したり、外国の安全保障能力を高める枠組みである「OSA」を使って巡視船も供与しました。

こうした動きが今後さらに加速していくなか、日本国内からは「バラマキ」との批判があります。

しかし、現状では全く足りていないフィリピンの沿岸警備能力を育てることは、結果的に日本の国益にもつながるのです。

フィリピンは台湾のすぐ南側にあって、台湾有事では沖縄とともに米軍の重要拠点になります。逆に中国が進めるA2AD戦略にとっては、第1列島線の真ん中に位置する国なので、くさびを打ち込まれると「痛い」部分です。

日本にとっても、シーレーン上に位置する重要な国であり、ここが中国の影響下に入るのはデメリットしかありません。

地政学的に重要なところにあるフィリピンの警備能力を高めれば、中国軍は南シナ海方面などに対応するためのリソースを割かねばならず、その分だけ南西諸島や尖閣方面の圧力がやわらぎます。

すなわち、フィリピンは自国軍を近代化できる反面、日本としては中国軍の戦力分散、少なくとも計算を狂わせる効果を期待できます。同じリソースを使って自衛隊の人員・装備を強化するよりは、こちらの方が費用対効果が高いかもしれません。

平時から仮想敵国の嫌がることを行うのは定石の手段ですが、こうした日本の動きはまさにその一例といえるでしょう。

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