休戦と現状の凍結化
双方とも決め手を欠き、損害と時間だけが過ぎるなか、戦局打開の展望はありません。
ウクライナにレオパルト2戦車、F-16戦闘機が届いても、優位性にはつながらず、長距離ミサイルも数が少ない以上、戦局を変えるほどの効果はなく、膠着状態が続いてきました。
ここまでの現状をふまえると、どちらかが決定的勝利を収める可能性は低く、最終的には停戦・休戦の機運が高まるでしょう。ただし、それは朝鮮戦争と同じく、あくまで「一時休戦」にすぎず、正式な「終戦(和平成立)」は見込めません。
なぜなら、双方が終戦を実現できる政治状況になく、両者の妥協が難しいからです。
ウクライナは失地回復を目指す以上、一時的な休戦はともかく、現状の固定化は選べません。彼らにとっては国土防衛戦、国家の存亡をかけた戦いです。そう簡単には妥協できず、失地回復の可能性に加えて、将来の安全保障が何より優先です。
他方、ロシアは国土防衛でも何でもなく、自らが始めた侵略戦争のため、プーチン自身が終わらそうと思えば、すぐに終わらせられます。
しかし、35万人以上の兵士を失い、その3倍が負傷にもかかわらず、制圧したのはウクライナの1/5にとどまり、ここで終戦を選んでしまうと、あまりに対価が割に合いません。
本来であれば、ウクライナ全土を支配下に置き、偉大なロシアを取り戻すはずでした。
ところが、戦争前と現在を比較すると、大量の戦力を失ったのみならず、隣国・ウクライナは重武装化が進み、自前で長距離ミサイルさえ開発済みです。
NATO入りこそ阻止できたものの、軍事大国化とNATOとの連携強化につながり、スウェーデンとフィンランドが加入するなど、逆にNATOそのものは拡大しました。明らかに戦前よりロシアの立場は悪く、自分の安全保障環境は悪化しています。
しかも、これが140万人の死傷者で得た「成果」です。
それでも、これほどの犠牲を出している以上、簡単には「損切り」ができず、ズルズルと戦争を続けてきました。ここで手を引くと、多すぎる犠牲が無駄に終わり、さすがのロシア世論も沸騰します。
思い返せば、日本も日中戦争で10万人を失い、そこで損切りができないまま、なんとか苦境を打開するべく、太平洋戦争に突入しました。ロシアも似たような事態に陥り、泥沼から脱出できていません。
さすがに厭戦気分が高まれば、停戦・休戦協議は可能でしょうが、その先に待っているのは、停戦ラインを挟んだ分断国家です。
それは朝鮮半島のような軍事境界線、緊張感の常態化につながり、再開に向けた戦力回復期間にすぎません。ともかく、停戦ラインを少しでも有利にするべく、引き続き攻防戦が繰り広げられるはずです。
どうすれば「終わる」のか?
和平の展望が見出せないなか、ロシア国内で政治的変化が起きれば、事態は変わるとされてきました。
つまり、プーチン体制の崩壊を指しますが、これはいささか甘い見通しです。
たしかに、この戦争の責任はプーチン大統領にあって、彼の意志や歴史観、強硬姿勢に基づいて、不要な侵略戦争が始められました。
一方、透明性に欠けた選挙とはいえ、彼を20年以上も大統領に選び、支持してきたのはロシア国民です。宣伝と教育の賜物といえども、ロシア国民はナチスドイツに勝った過去、ファシズムを打倒した栄光にすがり、それを免罪符に今回の侵略戦争に挑みました。
プーチンによると、ウクライナのネオナチ政権を倒して、平和と秩序を回復するべく、特別軍事作戦を始めたわけですが、このメンタリティは大統領に限らず、多くのロシア人が共有する意識です。
だからこそ、いまなお政権を支持する人は多く、たとえプーチン大統領が倒れても、後継者がプーチン路線を継承すれば、ロシアの本質は変わりません。仮に全く別路線の人物が就任しても、先述の「損切り」を敢行するのは難しく、犠牲を強いられた国民は納得しないでしょう。
結局のところ、ロシア指導部と国民が終戦を選ぶには、「敗戦」で衝撃を与えるしかありません。休戦で現状を固定化しても、将来的な侵略の芽は残り、ロシア国民の不満はくすぶり続けます。
日本とドイツが敗戦で変わったように、ロシアもウクライナで敗北を味わい、社会全体が過去の栄光から脱却すべきです。

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