アスターミサイルを使う「SAMP/T」防空システムとは？

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仏伊が共同開発

弾道ミサイルを撃墜する兵器といえば、「PAC-3」や日米共同開発の「SM-3」が思い浮かぶなか、ヨーロッパにも迎撃能力を誇るシステムがあります。

それがフランス・イタリアの「SAMP/T」であって、「アスター30」中距離艦対空ミサイルを使い、地上発射型の防空兵器に改修しました。

アスター30は1990年代に仏・伊の合弁企業がつくり、フランス・イタリア海軍の空母、イギリスの駆逐艦などで使われているミサイルです。

このミサイルは450kgの重さにもかかわらず、2段式のブースターを装備したところ、約120kmの長射程を実現しました。その代わり、数kmの飛翔距離が必要のため、あまり短距離防空では使えません。

発射後は途中まで慣性航法装置とともに、発射母体からの指令に従って進み、最終的には自身のレーダーを使いながら、目標を捕捉・追尾する仕組みに変わります。さらに、サイド・スラスターで高い機動性・旋回性能を持ち、最後は半径2mに弾頭の破片をばら撒き、散弾銃のように目標を破壊するわけです。

「SAMP/T」はアスター30を車載化しながら、3次元対空レーダー、指揮統制装置と組み合わせました。ちなみに、「SAMP/T」はフランス語の略称ですが、その意味は地上発射型の中距離地対空ミサイルです。

この防空システムは約350kmの探知距離を誇り、10個以上の目標を捕捉したあと、それらを同時に迎撃できます。

SAMP/Tの発射機（出典：NATO）

航空機や巡航ミサイルを撃墜するなか、弾道ミサイルの迎撃にも対応しており、欧州産の防空兵器としては唯一の性能です。

ただし、「SAMP/T」のアスター30はひとつの種類ではなく、以下のように複数のバージョンがあるほか、対応可能な脅威がそれぞれ異なります。

ヨーロッパ版のPAC-3と呼べそうですが、対北朝鮮を想定する日本とは違って、ロシアの短距離・中距離弾道弾を念頭に改修されました。

それゆえ、ロシアのウクライナ侵攻にともなって、ウクライナに「SAMP/T」を送り込み、特に都市防空で活躍してきました。

されど、ロシアでは超音速、極超音速ミサイルの開発が進み、「SAMP/T」も新たな脅威に対応せねばなりません。