ウクライナがロシアに逆侵攻した狙いとは何か?

ウクライナ軍の戦車 外国関連
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さらなる軍事支援に向けて

さて、ここまでは東部戦線の緩和、交換用の捕虜獲得、プーチン政権の権威失墜について書きました。

これらを狙いながらも、別の大きな目的が2つあると考えます。

まずは、欧米からさらなる軍事支援を引き出すこと。具体的には、長距離ミサイルなどの兵器を手に入れて、これらを制限なく使えるようにするのが狙いです。

これまでの軍事支援は小出しだったり、与えてもロシア領への攻撃は許可しないなど、その使用が制限されていました。そして、それはロシアによる核の脅しが効き、欧米側がエスカレーションを恐れたから。

しかし、ロシア本国への軍事侵攻という、明らかな「レッドライン」を超えたにもかかわらず、ロシア側の反応にかつての威勢は全く見られません。

ウクライナとしては、ロシアの脅しは見かけだおしにすぎず、長距離兵器・高性能兵器でロシア領を叩いても、問題ないことを示したかったのでしょう。

必要な武器を渡して、制限なく使えるようにすれば、この戦争は十分に勝てると伝えたわけです。

交渉に向けた交換材料

次に筆者が考えるのは、将来的な停戦交渉、もしくは和平交渉に向けた交換材料の確保です。なかでも、第2次トランプ政権の誕生を想定した動きともいえるでしょう。

バイデン政権とは違い、トランプ前大統領はウクライナ支援に消極的のほか、当選後はすぐさま停戦・和平交渉を行うと豪語しました。

おそらく、これは現状での停戦を意味するため、ウクライナは東部・南部を占領されたままになり、ロシア有利の状況をもたらします。もちろん、プーチン側からすれば、この停戦案はまさに「渡りに船」であり、いまの苦境から脱出する好機です。

ところが、ロシア本国の一部がウクライナに占領されている場合、こうした停戦案はプーチン政権には飲めません。ロシアの強い守護者を演じてきた以上、たとえ少しの領土であっても、敵に占領された状態は容認できないのです。

ロシアとウクライナの和平交渉図

加えて、ウクライナ軍が占領した土地には、スジャという天然ガスのパイプラインが通る町が含まれています。ここは欧州向けの輸出ガスの約50%が通り、メーターやバルブなどの重要施設もあります(そこまで影響を与えるかは微妙だが)。

上手くいけば、ウクライナは交換という形で、失った領土の一部は取り戻せるかもしれません。全土回復には及ばずとも、何も返ってこないよりはマシです。

すでにウクライナは制圧地域を確保すべく、塹壕を掘ったり、数少ない橋を落として防衛線を作っています。これ以上は積極的に侵攻せず、守りを固める方針にシフトしているわけです。

それは自軍の能力を超える、または必要以上のロシア領は獲らず、交渉材料としての分だけ確保しているようにみえます。

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