アメリカの優れた電子偵察機
北朝鮮がミサイル発射の兆候を見せる度、その周辺で目を光らせる飛行機があります。それがアメリカ空軍の電子偵察機「RC-135S」、一般的にコブラボールと呼ばれる機体です。
その歴史は1960年代に始まり、数度の改修や形式変更を受けながら、現在は弾道ミサイルの情報収集などに使われています。
- 基本性能:RC-135S・コブラボール
全 長 | 41.1m |
全 幅 | 39.9m |
全 高 | 12.8m |
乗 員 | パイロット×2 航法士×1 電子機器担当×3 その他×4 |
速 度 | 時速800km |
航続距離 | 約6,500km |
RC-135シリーズは輸送機や空中給油機をベースにしており、その広いスペースを活用して多くの機材を搭載してきました。ひとえにRC-135と言っても、画像撮影から電磁波収集など、微妙に任務の異なるいろんなタイプがあります。
日本でよく知られているのは、コブラボールとリベットジョイントですが、前者は弾道ミサイルに関する情報収集、後者は信号情報を集める偵察機です。
ここではコブラボールについて説明しますが、機体そのものは1969年までさかのぼり、冷戦期は24時間体制でミサイル監視を行いました。通常の偵察活動のみならず、軍備制限条約に基づく相互監視の一翼も担い、米ソの緊張緩和や関係安定化に貢献しました。
ミサイルの動向や飛翔軌道を捉えるべく、全天候型の追跡レーダーや電子・画像センサーを持ち、弾道ミサイルの発射から再突入まで正確に記録できます。高高度飛行がもたらす視界の広さを使い、地上からは捉えきれないミサイルの動きをつかみ、その情報をすばやく共有・連携します。
そして、機体の右側だけ黒く塗装していますが、これは太陽光の反射を抑えて、カメラ機材への悪影響を防ぐのが狙いです。
飛来はミサイル発射の前兆
コブラボールは3機しかなく、普段はアメリカ本土のオファット空軍基地(ネブラスカ州)に配備中です。しかし、他国で怪しい動きがあれば、24時間以内に世界のどこにでも向かい、偵察任務を果たせるようになっています。
アメリカは偵察衛星や電波傍受を使い、あらかじめ発射の兆候をつかみ、コブラボールなどの緊急派遣を通して、さらに詳しい情報を集めてきました。
実際のところ、北朝鮮がミサイル発射の動きを見せれば、沖縄の嘉手納基地にコブラボールがやってきます。それゆえ、コブラボールの出現はミサイル実験の前兆といえるでしょう。
軍用偵察機である以上、その動きは最高機密かと思いきや、じつは「フライトレーダー24」で位置を確認できます(いつもではないが)。本来は好ましくないものの、わざと公開することにより、監視対象国をけん制する意図があるのかもしれません。
いずれにせよ、コブラボールが日本海上空を飛べば、そろそろ北朝鮮がミサイルを撃つ可能性が高く、日本にとっては決して良い前兆ではありません。むろん、捉えた情報はミサイル防衛には役立ち、その一部は同盟国・日本にも伝えられます。
なお、飛行機自体は古いとはいえ、改修による能力強化を続けており、少なくとも2040年までは使われる見込みです。
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