中国海軍の戦力や空母艦隊、その恐るべき実力について

中国の空母艦隊 外国
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揚陸能力を強化中

一方、台湾侵攻には海上輸送力が欠かせず、兵站補給線の確立が最大の課題になります。幅130kmの海峡を渡り、30〜50万人の兵士を送り込み、大量の物資を運び続けるわけです。

ところが、空母や駆逐艦などの正面戦力と比べて、中国軍の揚陸能力は整備途中であって、現状では海上輸送力が足りていません。この状況で上陸部隊を送っても、安定した補給は厳しく、結局は継戦能力を失い、孤立・撃破されるだけでしょう。

どんな作戦も補給なしでは無理ですが、海を越えての遠征は想像以上に難しく、途方もない負担がのしかかります。太平洋戦争で補給戦に苦しみ、大量の餓死者を出した日本ならば分かるでしょう。

もっと歴史をふり返ると、ドイツは欧州を制圧しておきながら、結局は英仏海峡(34km)を渡れず、イギリス侵攻を諦めました。仮にイギリス上空の制空権をとっても、英国海軍の妨害で補給線を確保できず、最終的には失敗した可能性が高いです。

逆に米英はノルマンディーに上陸したものの、それは膨大な補給物資を飲み込み、フランス上陸後は兵站線の構築に苦労しています。あまり知られていませんが、米英連合軍の補給線は伸びきり、1944年末まで不安定な状況が続きました。

なお、1991年の湾岸戦争では50万人を砂漠に送り、その補給物資も滞りなく運んだとはいえ、これは大量の船舶・航空機を動員した結果です。そんな芸当はアメリカ以外にはできず、成長著しい中国軍といえども、その能力構築は容易ではありません。

さはさりながら、強襲揚陸艦、輸送艦の建造は急ピッチで進み、戦時徴用できる民間船舶を合わせると、それなりの海上輸送力は見込めます。中国では法律に基づき、民間船の強制徴用はもちろん、軍事転用を前提に建造させることが多いです。

こうした軍民両用船は200隻近くにのぼり、台湾侵攻では確実に駆り出されるほか、最近は港湾施設の損傷・破壊を見越してか、新たに巨大な桟橋型の艀(はしけ)が登場しました。

それは吊り橋のような部分を持ち、約120メートルの道路橋として機能するため、そのまま接岸して車両を揚陸させられます。しかも、複数を連接させながら、その長さを調節したり、事実上の移動港湾として働きます。

中国の揚陸用の桟橋新たに登場した桟橋型の揚陸艦?

以上のように、2025年時点では十分な海上輸送力がなく、当面は台湾侵攻は難しいでしょう。ちまたで言われている「2027年」には間に合わず、正面戦力がそろいつつあるなか、しばらくは揚陸能力の増強に注力するはずです。

実際のところ、侵攻自体に向けた努力は惜しんでおらず、軍民合わせて続々と輸送船をつくり、その能力をコツコツと高めています。それゆえ、決して安心や油断はできず、海軍力拡張のフェーズでいえば、揚陸能力という次の計画段階に移行しました。

弱点は対潜戦・機雷戦?

先述の輸送力不足に加えて、中国は「対潜水艦戦」「機雷戦」が比較的弱点とされており、その能力強化が台湾侵攻に向けた大きな課題です。

当然、中国海軍も改善を図るべく、装備の開発と対潜訓練に取り組み、哨戒機群も拡張してきました。機雷戦も新しい無人機を使い、対処能力を伸ばしていますが、正面戦力の充実ぶりに比べると、やや見劣りせざるをえません。

約20年前と比べると、その能力は劇的に向上したものの、まだ日米が両分野で優位性を保ち、特に海自は「対潜の鬼」「機雷戦の達人」です。空母運用とは違って、対潜哨戒・機雷除去では海自の方が経験値が高く、その執念は他国の比ではありません。

この海中を巡る戦いこそ、日米が突ける「スキ」であって、機雷敷設と潜水艦の派遣を通して、相手の海上輸送路を脅かせます。

わざわざ空母を狙わずとも、後方の補給線(台湾海峡と周辺海域)を撹乱すれば、中国の侵攻計画は大きく狂います。海上輸送力はさらに落ち込み、侵攻部隊の戦闘力低下につながるからです。

機雷封鎖と潜水艦の襲撃、これらは日本が嫌というほど味わい、その恐ろしさは身をもって経験しています。

もちろん、中国海軍も座視はしておらず、引き続き対潜・対機雷能力を高めるも、蓄積された経験とノウハウを考えると、そう簡単には追いつけません。空母の運用と同じく、これらは長年の錬成がモノを言い、海自側が訓練をサボらない限り、その差を埋めるのは難しいです。

ここまでの話をまとめると、中国海軍はアジア最強の座に登り、豊富な資金力と計画実行力に基づき、建艦競争ではアメリカを凌駕しました。すでに質・量ともにアメリカを猛追するなか、空母打撃群の運用態勢を確立しながら、現在は揚陸能力の確保を急いでいます。

一方、全体としては発展途上にあって、対潜・対機雷能力の底上げが課題など、まだ完成形にはいたっていません。そうはいっても、その拡張ぶりは恐ろしいほど速く、日米でさえ太刀打ちできないことから、このままでは逆転は時間の問題です。

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