日本は防空大国?自衛隊が誇る地対空ミサイルの充実ぶり

自衛隊のPAC-3ミサイル 陸上自衛隊
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わりと濃密な防空網

北朝鮮のミサイル問題、台湾有事の危機を受けて、日本は防空兵器の確保に力を注ぎ、意外にも世界有数の防空態勢を構築しました。

ロシア=ウクライナ戦争、あるいはイスラエル・イランの紛争により、防空の重要性が再認識されるなか、日本の防空網にも注目が集まり、その充実ぶりが明らかになりました。

まず、日本は弾道ミサイルを撃ち落とすべく、イージス艦とPAC-3を配備しながら、二段構えの迎撃態勢を敷いてきました。前者だけで8隻を持ち、さらに2隻のイージス艦が加わる予定です。そもそも、弾道弾を迎撃できる国は少なく、日本は稀有な能力を整備できたといえます。

この「対弾道ミサイル」が有名とはいえ、日本は一般的な防空にも力点を置き、かなり密度の高い防空網を形成しました。

中・高度域の防空に限っても、空自のPAC-3(ペトリオット)が28個中隊、陸自の03式中SAMが17個中隊もあって、他国と比べてものすごく充実しています。

参考までに言うと、ウクライナではペトリオットの活躍が続き、対ロシアの防空戦を支えていますが、その数はわずか6個中隊分にすぎません。数が足りていないなか、6個中隊であの活躍ぶりを考えると、日本の28個中隊は相当な戦力です。

PAC-3が高性能なのは有名ですが、国産の03式中SAMも負けておらず、「100発100中」と評価されてきました。これは誇張表現ながらも、高性能である点は変わらず、高射部隊の練度も合わさって、あの米軍すら驚く命中率を誇ります。

しかも、陸自には03式中SAMだけでなく、中距離多目的誘導弾、93式近距離対空ミサイル、11式短距離ミサイルなど、数多くの短・中距離ミサイルがそろい、これら防空兵器を含めると、「分厚い」防空網になります。

航空自衛隊のPAC-3日本はPAC-3大国

太平洋戦争での経験をふまえて、海上自衛隊が「対潜の鬼」なのは有名ですが、陸自・空自も本土空襲の教訓からか、防空面では「ガンギマリ状態」と評していいぐらいです。

本土防空戦では各地にレーダーを置き、監視態勢を敷いたにもかかわらず、肝心の迎撃手段が不足していました。その結果、B-29を早期探知はできても、結局は効果的に迎撃できず、各都市が焼け野原になりました。

この反省をふまえて、戦後は探知・警戒網だけではなく、有効な迎撃手段を多く持ち、多層的な防空網を築きました。少なくとも、敵からすると接近は難しく、いろんな防空火器が控えている以上、この多層防空網には挑みたくありません。

東アジアでは足りない?

欧州のような他地域にあてはめると、スキのない防空体制になるものの、これが「魔境」といわれる東アジアになると、むしろ心許ないと感じてしまいます。

周辺に中国、北朝鮮、ロシアを抱える以上、防空の脅威度も桁外れに高く、いくらあってもいい状態です。海自の艦隊規模が最強クラスにもかかわらず、東アジアで中国と対峙するがゆえに、足りていない状況と似ていますね。

実際のところ、中国のミサイル戦力はすさまじく、極超音速兵器やドローンなどの新たな脅威により、現状の防空能力が不十分なのは否めません。特に「弾薬」が足りておらず、飽和攻撃で押し切られるでしょう。

基本的な考えとしては、長距離→中距離→短・近距離の順に放ち、敵の戦力を削ぎながら、最終的な突破を阻止します。このとき、防空態勢の「層」が多いと、それだけ撃ちもらしを防ぎますが、これは十分な弾薬があってこそ成立するものです。

また、地理的特性をふまえると、日本は国土が南北に長く、2/3が山岳地帯なうえに、多くの離島を抱えています。ウクライナとは違って、戦力の機動運用が難しく、それは高射部隊も変わりません。

とりわけ離島地域の守りは薄く、小笠原諸島や大東諸島は迎撃手段どころか、監視網の空白になっています。移動式レーダーを置いたり、海自艦艇を派遣するとはいえ、やはり恒久的な施設・防空手段が必要です。

一方、沖縄方面は防空の強化が進み、防衛力の空白地帯を解消すべく、レーダーと地対空ミサイル部隊が配備されました。沖縄本島だけを切り取っても、空自のPAC-3が4個中隊もいるほか、陸自の03式SAMが3個中隊が待ち構えています。ここに在日米軍も加えると、さらにPAC-3が4個中隊も増えるなど、超高密度な防空網を実現しました。

ここで視点を変えると、高密度な多層防空網に対して、他組織との連携、民間防衛の部分は進んでおらず、地下シェルターどころか、避難マニュアルすら普及していません。もし都市防空を行う場合、迎撃戦闘で破片や残骸が降り注ぎ、民間人の避難誘導に加えて、消化活動も必要になってきます。

これらは消防・警察との連携が欠かせず、民間人の意識向上と訓練も重要です。いくら防空兵器をそろえても、民間防衛がおろそかだと意味がなく、このあたりが今後の大きな課題でしょう。

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コメント

  1. さめ より:

    中距離多目的誘導弾は対地対舟艇なので厳密には防空装備の一環として数えるのは違和感ありかと

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