自衛隊配備で空白解消!南西諸島の防衛力強化について

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防衛の空白地帯だった

中国の海洋進出と軍拡路線を受けて、日本は2010年代から防衛力強化に取り組み、自衛隊の南西シフトを進めてきました。

いまでこそ、南西諸島に自衛隊の基地を置き、対空・対艦ミサイルなどを配備していますが、2010年頃までは「防衛の空白地帯」でした。

以下の図のとおり、それまでは沖縄本島の自衛隊を除くと、宮古島が防衛力の最西端にあたり、あるのはレーダーサイトぐらいでした。

南西諸島の防衛体制

レーダー基地には少数の警備隊しかおらず、敵の上陸は言うまでもなく、潜入にすら対処できません。

「守備隊」という観点でいえば、沖縄本島より南西は無防備に等しく、警察と海上保安庁しかいない形です。与那国島など2人の警察官しかおらず、彼らが日本最西端を守っていました。

こんな状況で上陸されていたら、と考えるとゾッとします。

当時は水陸機動団も発足しておらず、中国軍も発展途上だったとはいえ、そのまま上陸・占拠を許してしまい、奪還作戦はものすごく難航したでしょう。

約15年かけて自衛隊を増強

さすがにマズいと感じたのか、2010年代には空白地帯の解消を図るべく、ようやく防衛態勢の強化を図ります。

まず、2016年に与那国島に沿岸監視隊を置き、戦力が警官2名から自衛隊員160名になりました。2018年には日本版海兵隊の水陸機動団を創り、独自の離島奪還能力を獲得するとともに、V-22オスプレイの導入で機動展開を目指しました。

同時に南西諸島への部隊配備が進み、奄美大島・宮古島・石垣島に警備隊を送り込み、地対空・対艦ミサイルを配置しました。ちなみに、石垣島には海保の巡視船がいますが、こちらも尖閣諸島の警備を強化するべく、その数を12隻に増やしています。

一方、沖縄本島は自衛隊がいたものの、陸自の第15旅団は1個連隊を加えて、師団規模に格上げ予定です。空自では第83航空隊が第9航空団に変わり、F-15戦闘機の数を倍増させたほか、新たに早期警戒機のE-2Cを配備しました。

また、PAC-3の追加配備で防空能力は高まり、沖縄本島はPAC-3の密集地帯になっています。PAC-3の射程は半径十数kmですが、超重要な那覇基地を手厚く守りながら、あらかじめ前線近くに置いておけば、有事での機動展開が楽になる寸法です。

今後も動きは止まらない

2020年代に入っても動きは止まらず、与那国島には新たに対空電子部隊を置き、電子戦能力を強化します。前述のオスプレイも佐賀空港に移り、佐世保の水陸機動団との連携、南西諸島への展開を容易にしました。

さらに、鹿児島県・馬毛島では新基地の建設が進み、主に米軍の訓練にあてながら、自衛隊の活動拠点にも使えます。馬毛島は8㎢の無人島とはいえ、中国海軍も通る大隅海峡をにらみ、その監視と南西諸島への展開に最適です。

米空母の艦載機が現在の硫黄島ではなく、馬毛島で離着陸訓練をするわけですが、普段は航空自衛隊が管理を行い、陸海空の各部隊が訓練などに使用します。

特に滑走路と港湾施設、燃料貯蔵庫は役立ち、南西防衛では重要な後方拠点になるでしょう。有事では本土と南西諸島をつなぎ、一時的に航空機を緊急避難させたり、戦力展開時の中継地点になる形です。

南西諸島の防衛力

以上のごとく、南西諸島はこの15年で大きく変わり、防空・対艦装備の配置を通して、中国軍の接近をそう簡単には許さず、日本版の「A2AD」を構築してきました。

ただ、こうした取組みにもかかわらず、いまなお空白地帯は残っており、南西方面では大東諸島、もっと東に目を向けると、小笠原諸島も取り残されています。これら島々は守備隊はおろか、レーダーサイトすら置いてなく、警戒監視上は盲点のままです。

一応、大東諸島には移動式レーダーを送り込み、暫定的に空白の解消を試みるものの、やはり恒久的な戦力配備が求められます。

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