イギリスの次期原子力潜水艦、ドレッドノート級の性能は?

ドレッドノート級原子力潜水艦 イギリス
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核抑止を担う戦略原潜

イギリスは核保有国である以上、その運搬手段を確保せねばならず、地上配備型のミサイルや戦略爆撃機ではなく、現在は原子力潜水艦に頼っています。4隻の「ヴァンガード級」に依存するなか、艦齢30年超えによる老朽化が進み、後継の原潜が必要になりました。

それゆえ、新たに「ドレッドノート級」を造り、2030年代に配備する予定です。

  • 基本性能:ドレッドノート級原子力潜水艦
排水量 17,200t(水中)
全 長 153.6m
全 幅 12.8m
乗 員 130名
速 力 約30ノット(時速56km)
兵 装 533mm魚雷発射管×4
弾道ミサイル発射基×12
建造費 1隻あたり約2兆円

まず、名前の「ドレッドノート(Dreadnought)」ですが、これは1906年に就役した戦艦と同じく、英語で「恐れ知らず」という意味です。

戦艦ドレッドノートの登場で世界に衝撃が走り、それ以降の戦艦を「弩級」「超弩級」に分類するほど、その名を海軍史に刻みました。あの「超ド級」の「ド」とは、このドレッドノートの頭文字なのです。

この歴史的意義をふまえて、かつての名前にあやかったわけですが、イギリスの核戦略を約30〜40年は担う以上、大きな期待を込めたといえます。

そんな新型原潜は4つの魚雷発射管4、12個のミサイル発射基を持ち、核による相互抑止を維持するべく、トライデント型の弾道ミサイルを搭載予定です。このミサイルはアメリカ製とはいえ、弾頭部分にはひとつではなく、8つの核弾頭を搭載できるため、実質的には最大96発を運用できます。

イギリスの核抑止をふりかえると、ひとつの原潜に最大48発を積み込み、常に1隻は哨戒させる態勢を維持してきました。逆にいえば、この48発が必要最低限の数であって、それを常時待機させなければなりません。

ヴァンガード級のあとを継ぎ、イギリスの核抑止戦略を支えるうえで、ドレッドノート級の責務は大きく、そのためのミサイル運用能力を確保しました。

ステルス性、機動力の向上

ドレッドノート級では静粛性の向上を図り、新しい音波吸収材に加えて、ステルスコーティングを使い、全体的に騒音を減少させました。そして、新型の推進機関と初採用のX字型の舵、クジラを参考にした艦設計により、水中機動力を高めながら、さらなる騒音軽減を目指しました。

水中機動力についていえば、これまでの油圧式システムではなく、電気信号を使う「フライバイワイヤ」で操るため、すばやい反応と細かい操舵が期待できます。

また、ロールスロイス製の新型原子炉を積み、維持管理費と省電力化の両方を達成しました。この原子炉は従来型と比べて、部品数が30%少ないことから、メンテナンスが楽になるとともに、全体の寿命も伸びました。

ドレッドノート級原子力潜水艦ドレッドノート級のイメージ図

さて、戦略原潜はどこにいるか分からず、核ミサイルを突然撃ってくるがゆえに、相互抑止状態を生みます。原子力エネルギーを使いながら、長期間にわたって海中に潜み、乗員は狭い艦内で数ヶ月も過ごすわけです。

したがって、艦内には食堂、ジム、簡易講堂、医務室が備わり、3人のシェフを配置するなど、特に食事面は優遇するようにしています。なお、ドレッドノート級には女性も乗り込み、新たに女性専用区画を設けながら、プライバシーを確保しました。

計画は順調に進むか?

イギリス待望の新型原潜といえども、最大の懸念事項は計画が滞りなく進むかどうか。そもそも、計画自体は2010年代に始まり、当初は2028年頃の就役を目指していました。

ところが、イギリスは慢性的な財政難に苦しみ、議会でも反対運動が起こるなど、さまざまな課題に直面します。なんとか予算こそ通したものの、その総額は8兆円以上にもなり、現行のヴァンガード級よりは長く使うとはいえ、財政難のイギリスにとっては痛い出費です。

しかも、建造ドックの拡張工事が遅れたり、原子炉の製造工場も遅れるなど、最終的には就役が2030年代にズレ込みました。アメリカなど他の欧米諸国と同じく、イギリスも冷戦後の軍縮と予算削減にともない、その建艦能力は大きく落ち込み、かつての姿は全くありません。

潜水艦に限らず、水上艦艇も計画遅延が常態化しており、造船能力の低下が戦力整備計画の混乱、ひいてはコスト高騰をもたらしています。

ドレッドノート級についても、コスト超過と計画遅延に見舞われる可能性が高く、すでに苦しいイギリスの懐事情、海軍の稼働状況に拍車をかけるかもしれません。

核抑止という安全保障の根幹を担う以上、建造計画の遅延や迷走は許されず、ここは踏みとどまってほしいところです。

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