全国28カ所に設置
日本列島は南北に縦長く、14,125もの島々を抱えているため、隅々まで監視の目が届きづらく、警戒網を敷くのが難しい国土です。それでも、航空自衛隊は防空任務を達成するべく、全国28カ所にレーダー基地を置き、ほぼ全国をカバーしています。
太平洋戦争をふり返ると、旧日本軍は各地に防空レーダーを作り、本土防空では性能不足ながらも、敵機の侵入を探知していました。その教訓は戦後の空自が受け継ぎ、一部のレーダーサイトは旧軍と同じ場所にあります。

これは奇しくも、というよりは地理的に必然的であって、地上レーダーは水平線の影響を受けやすく、時代が変化しても「適地」は変わりません。なるべく遠くまで見渡すためにも、山頂(高地)や突き出た半島の先端、離島などに設置したわけです。
したがって、レーダーサイトは僻地にあることが多く、空自では「分屯基地」と呼び、いわゆる僻地手当が支給されます。
分屯基地は小規模とはいえ、自律組織の拠点には変わらず、一般隊員はそこの宿舎に住み込み、食堂や売店などの最低限の厚生施設があります。山岳部にポツンとある場合、定期的に輸送ヘリで補給を行い、長らく空自の「CH-47J」が活躍してきました。
軍事基地である以上、レーダーの監視要員だけでは務まらず、その整備を担う通信電子隊、基地全般を管理する業務隊がいるほか、必要に応じて基地警備隊を編成します。
基地でレーダーが違う
ひとえに「レーダーサイト」と言っても、使用するレーダーは同じではなく、実際は基地によって異なります。
世間的には「ガメラ・レーダー(J/FPS-5)」が有名ですが、これは北朝鮮の弾道ミサイルに対処するべく、佐渡や大湊などの4カ所にしかありません。これは2008年頃から配備が始まり、わりと新しいレーダーに該当するなか、1基あたり約180億円はかかり、サイズ的にも全ての分屯基地には置けません。
逐次アップデートはするものの、古い場所だと1980年代の装備を使い、同じ空自のレーダーサイトといえども、配備レーダーの種類と性能が違います。
先述のガメラ・レーダーともなれば、高高度を飛ぶ弾道ミサイルに加えて、ステルス機や低空の巡航ミサイルも探知可能です。一方、古い「J/FPS-2」は探知範囲が狭く、低空目標やステルス機の対処は期待できません。
有名なガメラ・レーダー(出典:航空自衛隊)
むろん、レーダーの陳腐化は放置できず、「J/FPS-3」「J/FPS-4」などへの更新が進み、優先順位の低い数カ所を除くと、全体ではアップグレードしています。
日本に対する脅威を考えた場合、北と西(南西を含む)に注力せねばならず、レーダーサイトの性能も比例してきました。それゆえ、本土の一部基地が古いままなのに対して、国境付近の基地や離島は新型になりやすく、近年は南西方面を優先している状況です。
たとえば、新しい「J/FPS-7」は首都圏ではなく、宮古島と沖永良部島に配備しながら、稚内(北海道)、見島(山口)、高畑山(宮崎)、海栗島(対馬)にも置き、北・西・南西の端っこを固めました。
ちなみに、これは弾道ミサイルを探知できるにもかかわらず、価格をガメラ・レーダーの半分以下に抑え込み、電波の出力をさらに高めました。
また、国境付近のサイトは警戒監視のみならず、外国の電波を傍受・分析する役目を持ち、そのための専用設備が併設されています。これは「地上電波測定装置」と呼び、北海道は稚内や根室、奥尻島に限り、南は背振山、宮古島、福江島(長崎)にしかありません。
レーダー性能の推測
当然ながら、レーダー性能の詳細は最高機密にあたり、具体的な数値は公表されていません。あくまで推測なれども、「J/FPS-3」以降の探知距離は300km以上、目標の高度次第では約600kmとされています。
これが「J/FPS-5」以降になると、弾道ミサイルを探知・追尾することから、その捜索範囲は1,000km以上まで伸びます。とりわけガメラ・レーダーは高さ30m、アンテナだけで直径18mの大きさを誇り、その代わり探知距離は数千kmになるそうです。
なお、ひとつのレーダーサイトではなく、複数で重層的な警戒監視を行うほか、ここに早期警戒管制機なども加わり、全体で複合的な防空網を形成します。特に早期警戒機は高高度から見下ろすため、レーダーサイトを補完する役割を担い、警戒監視網の穴を埋めてきました。
いまだ残る空白地帯
さて、28カ所のレーダーサイトがあるにもかかわらず、現状では隅々まではカバーできていません。
近年は中国の海洋進出を受けて、南西諸島への配備が進んだとはいえ、大東諸島と小笠原諸島では空白が残り、警戒監視網における弱点になっています。
空白地帯には移動式レーダーを送り込み、なんとか「穴」を塞ぐつもりですが、探知範囲と運用性では恒久施設に劣り、レーダーサイトを新設しないと解消しません。
一応、小笠原諸島は硫黄島にレーダーがあるものの、これは旧式の「J/FPS-2」であるうえ、あくまで教育訓練用にすぎず、他の島々から300km近く離れています。
空白地帯を解消するならば、大東諸島への新設はもちろん、硫黄島のレーダーを更新するとともに、小笠原諸島に2つは置きたいところです。父島・母島のどちらかにひとつ、八丈島にもひとつを置くと、最低限のエリアはカバーできます。


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