欠陥なのか?イギリス海軍の45型駆逐艦が秘めた性能

イギリス
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従来型より大型化

イギリスは1982年にアルゼンチンと戦い、フォークランド紛争に勝利したものの、敵の航空攻撃で多くの艦艇を失い、エグゾセ対艦ミサイルの脅威を認識しました。

そこで従来の42型駆逐艦に変わり、さらに防空能力を高めた「45型」を開発します。

  • 基本性能:45型駆逐艦
排水量 7,350t
全 長 152.4m
全 幅 21.2m
乗 員 約190名
速 力 30ノット以上(時速55.6km)
航続距離 約7,000浬(12,960km)
兵 装 4.5インチ速射砲×1
20mm CIWS×2
30mm機銃×2
12.7mm機関銃×2
7.62mm機関銃×6
垂直発射装置(VLS)×48
短距離対空ミサイル×24
NSM対艦ミサイル(追加予定)
レーザー指向兵器(追加予定)
艦載機 哨戒ヘリ×1
建造費 1隻あたり約2,000億円

当初はNATO共同の防空艦を目指すも、各国との調整が上手くいかず、1990年に計画を断念します。

その後、イギリス独自の駆逐艦を造りながら、仏・伊と開発した防空システムを組み込み、ようやく2009年に1番艦が就役しました。この1番艦の名前にちなみ、45型は「デアリング級」とも呼び、以降の艦名は全て「D」から始まります。

紆余曲折の末、初期構想より船体は大きくなり、その分だけ居住性の向上とともに、長期の海外派遣に対応しました。一般の水兵はともかく、士官(幹部)は個室を与えられており、下士官でさえ2人部屋の余裕ぶりです。

普段は190名で運用しますが、235人まで増やす余裕があるうえ、60名の海兵隊員が乗艦できます。

こうした大型化にもかかわらず、全体的に傾斜を付けた結果、レーダー反射断面積を抑え込み、一定のステルス性を確保しました。

そして、主機関には統合電気推進を選び、艦内の全動力を共通化しながら、新しい制御技術で電力を効率的に送り込み、省エネとコスト削減を図りました。

電気推進はガスタービンに比べて、「弱い」「遅い」印象があるとはいえ、試験では31.5ノット(時速58.3km)を記録しています。

英国のミニ・イージス

さて、45型駆逐艦は艦隊防空を担う以上、「PAAMS」という防空システムを使い、各兵装を効果的に統合運用する仕組みです。フォークランド紛争の教訓に基づいて、低空で接近するミサイルを狙い撃ち、確実に叩き落とす能力を目指しました。

多機能レーダーは400km以上の探知距離を誇り、数百〜1,000個の目標を捕捉しながら、垂直発射装置(VLS)からアスター対空ミサイルを放ち、同時に5個以上を迎撃できます。もし多機能レーダーが使えない場合、3次元対空レーダーがバックアップします。

多機能レーダーはとても評判がよく、野球ボールほどの目標が超音速で飛来しても、問題なく捕捉・追跡できるそうです。その実力はアメリカのイージス艦に近く、同時交戦と連続対処能力に優れています。

なお、同じアスター対空ミサイルでも、主に短距離向けの「アスター15」、中距離用の「アスター30」があるため、状況に合わせて使い分けてきました。しかし、改修で短距離防空ミサイル(24発)が加わり、既存のVLSはアスター30に全振りするつもりです。

もし防空ミサイルが突破されたら、4.5インチ速射砲、20mm CIWS、30mm機銃で防ぎ、他国より厚い火力網になりました。

一方、弾道ミサイルは対処できないものの、限定的な捕捉・追跡は可能とされており、新たなアップグレード計画を通して、短距離弾道弾の迎撃を目指します。

また、最近はドローンの脅威を受けて、レーザー指向兵器の地上試験が始まり、2027年に45型駆逐艦に搭載予定です。レーザー搭載前の話になるも、2024年には紅海でフーシ派と戦い、7機以上のドローンを撃墜するなど、持ち前の防空能力を発揮しました。

対潜・対艦能力は限定

防空以外の能力をみると、対潜戦は主に艦載機に頼り、哨戒ヘリから魚雷を投下します。対潜ソナーはあれども、アスロックや独自の対潜魚雷は積んでおらず、あるのはデコイぐらいです。

対艦ミサイルについても、以前はハープーンを搭載しましたが、現在は全て撤去されました。その代わり、NSMミサイルへの換装を行い、ステルス打撃力を高める狙いです。

以上のとおり、45型駆逐艦は防空に主眼に置き、その分だけ対潜・対艦能力は妥協しました。

指摘されてきた欠点

45型は防空能力は高く評価されるも、複数の欠陥を指摘されています。

対潜能力の欠如もそうですが、どうやら水中雑音がうるさいらしく、かなり遠くの潜水艦に届くほどです。せっかくのステルス性が損なわれてしまい、対潜戦では不利に働くことから、現場では改善が望まれています。

前述の電気推進に再度触れると、発電機の容量不足で停電が起き、現代艦としてあるまじきと批判されます。結局、エンジンの換装だけではなく、2基から3基に増やす大工事が決まり、さらなる費用がかかりました。

数が足りない・・・(出典:イギリス海軍)

そもそも、45型は建造時からコスト高騰に苦しみ、1隻あたり約2,000億円とされています。価格面ではイージス艦と変わらず、厳しい予算をふまえて、建造数は12隻から徐々に減りゆき、最終的には6隻まで半減しました。

本来は42型(12隻)を更新すべきところ、その役目を半数で埋めねばならず、1隻あたりの負担は増えました。しかも、改修工事と予算不足は稼働率の低下を招き、2隻ぐらいしか稼働していません。

そろそろ次の防空艦も考えねばならず、イギリスは「83型駆逐艦」を造り、防空能力を維持・強化つもりです。

しかし、最近のイギリスは造船能力が落ち込み、アメリカ同様の迷走を重ねてきました。83型駆逐艦の建造が上手くいかず、その就役が遅延する可能性を考えると、45型が担う重責は変わりません。

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