「ステルス艦」の先駆者
現代の戦闘艦といえば、ステルスを意識したデザインが多く、特にフリゲート艦の基本設計になりました。そして、その先駆けのひとつにあたるのが、フランスの「ラファイエット級」です。
- 基本性能:「ラファイエット級」フリゲート
| 排水量 | 3,200t(基準) |
| 全 長 | 125m |
| 全 幅 | 15.4m |
| 乗 員 | 164名+特殊部隊25名 |
| 速 力 | 26ノット(時速46km) |
| 航続距離 | 9,000浬(17,000 km) |
| 兵 装 | 100mm速射砲×1 20mm機関砲×2 エグゾセ対艦ミサイル×8 短距離防空ミサイル |
| 艦載機 | 哨戒ヘリ×1 |
| 建造費 | 約600億円 |
ラファイエット級の配備は1992年に始まり、長らくフランス艦隊を支えてきました。その艦名はアメリカ独立戦争、フランス革命で活躍した英雄にちなみ、計5隻が建造されました。
レーダー反射断面積(RCS)を低減すべく、設計の段階からステルス性を組み込み、全体的に約10度の傾斜を付けながら、なるべく平面構造のデザインにしました。また、ガラス繊維強化プラスチックを使い、電波の反射と磁気反応を抑えていいます。
このような工夫の結果、3,300トン以上の軍艦にもかかわらず、哨戒艇・大型漁船と同レベルのRCSになり、当時として異例のステルス性でした。いまでこそ、アンテナ類・短艇が艦内に収まり、スッキリした外観が主流とはいえ、ラファイエット級はそれを先取りした形です。
さらに、特殊なジャマーで偽の艦影を生み、エンジン排熱の抑制で赤外線探知を避けたり、ミサイルを撹乱するデコイ装置を使い、フリゲートのステルス性を補完しました。
思い切って対潜能力を省く
高いステルス性を獲得した代わり、兵装・戦闘能力は限られており、他のフリゲートと比較すると、全体的にもの足りません。
たとえば、短距離の防空ミサイル、エグゾセ対艦ミサイルはあれども、垂直発射装置(VLS)は搭載しておらず、設置スペースだけ用意されています。
そして、驚くことに対潜兵器はなく、当初はソナーすらない状態でした。さすがにソナー無しはまずかったのか、2020年以降の近代化改修で追加したものの、現在も対潜兵器はありません(魚雷発射管の場所はある)。
これは領海警備と海外領土の防衛をふまえて、あえて「対潜能力を省く」と割り切り、コンパクト・ステルスを優先した結果です。
逆に水中雑音を減らすべく、特殊ゴムで推進器にコーティングを行い、同様の素材をエンジンの下に置き、振動の伝わり方を軽減しました。船体下部からは細かい泡を放ち、潜水艦のソナーを撹乱させたり、迫りくる魚雷をダマすなど、一定の自己防御機能は備えました。
他方、特殊部隊の母艦機能を持ち、約25〜30名の特殊部隊が乗り込み、専用の高速艇を搭載・運用できます。
すなわち、ラファイエット級はフリゲートでありながら、あまり対潜戦は想定しておらず、「領海・領土警備+α」を主軸に置き、低劣度の脅威を意識した軍艦です。
輸出成功と台湾での事件
ステルス設計が功を奏してか、ラファイエット級はフランス本国だけではなく、台湾・サウジアラビア・シンガポールで採用されました。ただし、これらは輸出先のニーズを聞き取り、ソナーと魚雷発射管を追加するとともに、主砲を76mm速射砲に換装しています。
なお、台湾への輸出では汚職事件が起き、多額の賄賂がフランス政界に流れたり、当時のフランス首相が失脚するなど、一大スキャンダルに発展しました。フランス版の「ウォーターゲート事件」と呼び、いまも闇深い事件として知られています。
さて、ラファイエット級も就役から30年が経ち、改良工事で延命を図ってきました。5隻中3隻は近代化改修が終わり、新たな防空ミサイルを備えたところ、2030年頃まで使われる予定です。
しかし、改修に限度があるのは変わらず、2030年代には待ち望んだ後継として、多用途に使える「アミラル・ロナルク級」を配備します。
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