新しい歩兵戦闘車
イギリス軍では冷戦終結後に予算削減が続き、陸軍の戦闘車両は稼働数が落ち込み、一時は危機的水準に陥りました。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、イギリスも軍拡路線に舵を切り、新型戦車「チャレンジャー3」を開発するなど、能力向上を図っている最中です。
そして、装甲戦闘車には「AJAX(エイジャックス)」を選び、新型戦車に同行する戦力として期待されています。
- 基本性能:AJAX装甲戦闘車
| 重 量 | 38t |
| 全 長 | 7.62m |
| 全 幅 | 3.35m |
| 全 高 | 3m |
| 乗 員 | 装甲偵察型:3名 歩兵戦闘型:3名+4名 |
| 速 度 | 時速70km |
| 兵 装 | 40mm機関砲×1 7.62mm機関銃×1 |
| 価 格 | 1両あたり約20億円 |
エイジャックスは装甲戦闘車とはいえ、実際は複数の派生型からなるシリーズ名であって、アメリカのジェネラル・ダイナミクス社が手がけました。もともとは装甲偵察車の名前ですが、ややこしいことに源流をたどると、「ASCOD」という歩兵戦闘車に行き着き、シリーズ自体がその発展改良型といえます。
エイジャックス・シリーズのうち、装甲偵察型が本来の「AJAX」にあたり、歩兵戦闘車は「ARES(アレス)」、指揮通信型は「ATHENA(アテナ)」と分類してきました。
ここでは主に装甲偵察型を解説しますが、どれも遠隔操作式の無人砲塔を持ち、40mm機関砲を搭載しました。これは偵察車両として異例の大火力になり、約2.5kmの有効射程とともに、毎分200発の発射速度を誇ります。
たとえば、「M2ブラッドレー」は25mmにもかかわらず、ウクライナでロシア軍のT-90戦車と戦い、事実上の「撃破」に成功しました。25mmでは戦車を貫けずとも、命中箇所によっては戦闘不能に追い込めます。
この点をふまえると、40mmの火力はすさまじく、エイジャックスは装甲車はもちろん、戦車でさえ「ハチの巣」にできるなど、強力な打撃力を確保しました。
おもしろことに、AJAXの弾薬は弾丸を炸薬で包み、いわゆる「薬莢(ケース)」を不要にしました。その結果、弾薬の重量は軽くなり、搭載数の増加と装填時のトラブルを減らしました。
無人砲塔は新しい射撃管制装置に加えて、最新のセンサー・探知装置を多く組み込み、偵察車両に必要なISR(情報・警戒監視・偵察)を備えています。そして、システム全体のデジタル化を通して、状況認識・情報共有能力の強化を行い、味方との連携や統合運用をもたらしました。
一方、防御面ではモジュール装甲を使い、銃弾の直撃と砲弾の破片、地雷の爆風から乗員を守り、状況に合わせて変更・追設可能です。モジュール式の設計は柔軟性が高く、海外輸出の促進に役立ち、コスト削減を図る狙いが見えます。
ほかにも、電子戦装置とNBC防護機能を装備しており、全体的には高い生存性を実現しました。
振動・騒音問題で不評
偵察装甲型は役割を果たすものの、歩兵戦闘型(IFV)には4名しか乗り込めず、他のIFVと比べて兵員輸送力で劣ります。通常は6〜8名の兵士を運び、戦場のタクシーになる点を考えると、やはりエイジャックスは輸送力が足りていません。
しかも、振動の大きさから乗り心地が悪く、騒音がひどいとの欠陥が指摘されています。特に騒音は偵察車両として致命的であるため、イギリスでは評価試験が途中で止まり、原因究明と問題の解決を目指しました。
本来は2017年に配備すべきところ、実際の運用は2025年にズレ込み、振動問題は改善されたとはいえ、いまだに現場では「うるさい」と言われています。一部報道によると、同乗した兵士が聴覚に異常をきたすなど、もはや「うるさい」のレベルを超えています。
機甲部隊の中核を担う以上、シリーズ全体で多数を配備せねばならず、その車両が騒音問題を抱えている限り、イギリス軍の将来から不安が拭えません。
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