ロシアのステルス戦闘機
映画「トップガン・マーヴェリック」にて、主人公が対峙する謎の戦闘機。そのモデルになったのが、ロシアのSu-57戦闘機です。
ロシア初の第5世代・ステルス機にあたり、アメリカのF-22とF-35に対抗するべく、同国の最新技術を反映しました。
- 基本性能:Su-57戦闘機
| 全 長 | 20.1m |
| 全 幅 | 14.1m |
| 全 高 | 4.6m |
| 乗 員 | 1名 |
| 速 度 | マッハ2.0(時速2,100km) |
| 航続距離 | 約4,500km |
| 高 度 | 約18,800m |
| 兵 装 | 30mm機関砲×1 誘導爆弾 対空ミサイル 対地ミサイル 対艦ミサイルなど ※最大搭載量は7,500kg |
| 価 格 | 約80〜100億円 |
Su-57の歴史をふり返ると、「PAKFA」という開発計画に始まり、その目的はMiG-29、Su-27の後継機を作ることでした。
試作機は「T-50」という名称の下、2010年1月に初飛行を果たしており、その後は試験飛行を繰り返しながら、2020年に「Su-57」として正式配備されます。
ちなみに、NATOでは「フェロン(Felon)」と呼び、日本語では罪人という意味です。
そんなSu-57の特徴といえば、やはり高いステルス性能でしょう。
機体の形状を工夫したところ、レーダー反射面積(RCS)を抑え込み、各種兵器は胴体内に収容します。
ただし、従来のロシア軍機に比べると、ステルス性が高いものの、F-22やF-35よりは大きく映り、RCSではワンランク下の扱いです。ステルス技術になると、どうしてもアメリカがこの分野に強く、ロシアは出遅れてきました。
しかも、Su-57の機体を細かく見ると、エンジンの吸気口の形状、コックピット周りなど、ステルス処理の甘い部分が目立ち、F-22ほどは徹底していません。そのため、「準ステルス」と評価する声も多く、F-22とは同列に語れません。
他方、新型のAESAレーダー、最新の電子機器、AI支援システムなど、ロシアの先端技術を盛り込み、決して低い性能ではありません。
とりわけ良好な機動性を持ち、排気口に推力変向装置を加えて、超機動的な動きを可能にしました。その加速性能も高く、アフターバーナーを使わずとも、超音速で飛行できる、スーパークルーズ能力があります。
この高い運動性能は空戦、特に近接格闘戦で優位性につながり、映画の敵役にふさわしい理由です。
最近は遠距離で自律誘導のミサイルを撃ち、有視界戦闘は減ったとはいえ、双方とも高性能なステルス機の場合、長距離交戦には持ち込めず、そのまま格闘戦になるかもしれません。
そうなると、結局は運動性能が勝敗を分けやすく、Su-57の機動力は脅威になるでしょう。
さらに、Su-57は多種多様な兵器を扱い、通常のミサイルは言うまでもなく、超長射程ミサイルが使えるほか、極超音速兵器の運用、無人機(S-70)との連携も目指しています。
すなわち、Su-57は良好なステルス性とともに、優れた運動性能を誇り、制空戦から精密爆撃、電子戦など、多目的に使える新型戦闘機です。
戦場での存在意義
改めてF-22・F35と比較すると、彼らがステルスを優先したのに対して、Su-57はステルス性のみならず、機動性と多用途能力にも重点を置き、バランスを重視した設計といえます。
だからこそ、Su-57はステルス勝負になると、F-22・F-35には敵わず、代わりに運動性能を含む、総合能力で対抗する形です。
これはロシア自身も認めており、ステルスだけが第5世代の条件ではなく、マルチ能力の重視を表明してきました。
こうした点をふまえると、その評価はF-15・F-16以上、F-22・F-35未満に落ち着き、戦場では相当な脅威になるはずです。
F-22・F-35の方が優位といえども、近距離格闘戦では互角に戦い、他のステルス兵器、電子戦装備と組み合わせたら、簡単な勝負にはなりません。
Su-57が飛んでいれば、敵のステルス機の行動を制約したり、ためらわせる効果は働き、逆にステルス機がいない状況なら、圧倒的優勢をもたらします。
量産の遅れが欠点
一方、最大の欠点は量産性の悪さです。
テスト用の機体を含めても、生産数は40〜45機にとどまり、年間で数機しか製造できないなか、2026年7月には事故で貴重な機体を失い、戦力不足に拍車をかけました。
2028年まで76機を配備予定とはいえ、ウクライナ侵攻で経済制裁を食らい、半導体などの重要部品が手に入らず、生産能力は上がっていません。
国内の代替技術を使ったり、中国から部品を調達したものの、ウクライナでの消耗が激しく、現在は陸上兵器が優先されています。現状では最新戦闘機の優先度は低く、ドローン・火砲・戦車の生産が最優先です。
加えて、開発中にエンジン問題が判明したため、従来型で間に合わせるしかなく、Su-57は新型エンジンが完成するまで、本来の性能を発揮できません。
暫定エンジンを搭載したまま、ロシア空軍に配備したものの、あまりに貴重で数が少ないからか、ウクライナ侵攻では前線に近づかず、安全な後方から長射程ミサイルを放ち、慎重な運用を続けてきました。
明らかに損失を避けながら、実戦データを蓄積するつもりですが、量産体制の遅れが響き、戦力化が進んでいません。
対するF-35は1,000機以上が飛び、その差は歴然としています。
もちろん、ロシアも友好国への輸出など、量産体制の整備に取り組み、2025年にはアルジェリアが輸出版を買いました。
ステルス戦闘機にもかかわらず、Su-57の調達はF-35より安く済み、中東・アフリカでは需要があります。あとは量産できるかですが、泥沼の戦争が終わらず、財政的にも苦境が続く以上、現状では十分な数をそろえられず、戦略的な意味は限られるでしょう。
戦争の歴史が示すとおり、いくら高性能兵器を開発しても、それを量産できなければ、戦局には寄与しませんから。
コメント