宇宙で目標を破壊
北朝鮮の核兵器・ミサイル開発を受けて、日本はミサイル防衛(BMD)に力を注ぎ、世界有数の能力を確立しました。
他方、この分野はアメリカが先行しており、日本の二段構え(「SM-3」「PAC-3」)に対して、THAADやレーザー兵器も加えるなど、多層的なBMD網を構築しています。
その中でも、アメリカ本土を核ミサイルから守り、「最後の砦」のひとつにあたるのが、地上配備型の「GBI(Ground-Based Interceptor」です。
- 基本性能:GBIミサイル
| 重 量 | 21.6t |
| 全 長 | 16.6m |
| 直 径 | 1.28m |
| 速 度 | マッハ33(時速27,500km) |
| 射 程 | 5,300km |
| 高 度 | 2,000km |
| 弾 頭 | 大気圏外迎撃体(直撃型) |
| 価 格 | 約160億円 |
GBIはTHAADやPAC-3と同じく、地上発射型の迎撃ミサイルですが、全長16.6m/重さ21.6トンの大きさを持ち、その姿はもはや中規模のロケットです。実際のところ、三段式のブースターで打ち上がり、宇宙空間まで到達することから、ほとんどロケットに該当します。
なお、同じ大陸間弾道ミサイル(ICBM)の迎撃でも、THAAD・PAC-3とは投入する「場面」が異なり、大気圏外で迎撃するのが役目です。
ICBMには上昇中のブースト段階、大気圏外を慣性飛行する中間段階、大気圏に再突入する終末段階があって、各フェーズで迎撃手段を使い分けます。この役割分担に基づいて、THAAD・PAC-3はともに終末段階で、イージス艦のSM-3は中間段階で迎撃します。
そして、GBIはSM-3と同じ中間段階、つまり大気圏外(宇宙空間)で迎え撃ち、そのまま目標に直撃・破壊する仕組みです。ここで撃ち漏らした場合、再突入時の加速で迎撃難易度はハネ上がり、GBI・SM-3でカタをつけられるならば、それに越したことはありません。
そんなGBIは宇宙空間で迎撃するべく、マッハ30以上の最高速度を誇り、2003年の試験では射程5,300km、高度1,770kmに達しました。
迎撃メカニズムを説明すると、まずは早期警戒衛星、各種レーダーがミサイルを探知したあと、情報をミサイル防衛統合運用センターに送り、すぐさま迎撃に必要な分析・計算を行います。
その後、地上発射管制システムが最適手段を選び、ここでGBIミサイルを選定すれば、カリフォルニア州・ヴァンデンバーグ基地、あるいはアラスカのフォート・グリーリーに発射を命令。
GBIはロケットブースターで飛翔後、特殊な迎撃体を切り離すものの、これは直撃破壊方式を用いるため、爆薬などは搭載していません。
迎撃成功率は低い?
あくまで物理的な衝突の力だけを使い、ICBMの弾頭を破壊するわけですが、それは「弾丸を弾丸で撃ち落とす」に近く、針の穴を通すような精密さが必要です。
いくら高性能なセンサー、推進装置で微調整できるとはいえ、地球の反対側から上がるミサイルに対して、宇宙空間で正確に衝突せねばならず、しかも両者はマッハ10以上で飛んでいます。
当然、迎撃難易度は非常に高く、1997年の初飛行以降、何度も発射実験を繰り返しながら、改良を重ねてきました。
2017年にはICBMを想定した迎撃試験を行い、標的のミサイルを宇宙空間で見事に破壊しています。その後も技術改良は続き、2023年に統合運用を試みるとともに、中距離弾道ミサイル(IRBM)の迎撃試験に成功しました。
しかし、累計18回の迎撃試験のうち、目標の破壊は10回にとどまり、その迎撃成功率は55〜60%です。同じのミッドコースを狙うSM-3の90%、最終防衛を担うTHAAD・PAC-3の90%より低く、どうしても見劣りする感が否めません。
北への集中配備と後継
GBIの配備先はカリフォルニア、アラスカと説明しましたが、前者への配備は4基にとどまり、大半はアラスカで運用しています。
これは北朝鮮や中国がアメリカ本土を狙う場合、その最短コースは北極圏を経由する形になり、アラスカはちょうど弾道の真下にいるからです。
すなわち、弾道ミサイルの迎撃を考えると、アラスカは地理的に最適の場所にあって、現在ある44基のGBIミサイルのうち、40基を集中配備してきました。
しかし、当初は64基の配備を計画するも、1発160億円以上もするほか、周辺設備の維持管理費を合わせると、運用コストは約600億円になるそうです。
加えて、設計時は北朝鮮やイランなど、「ならず者国家」が少数のミサイルを撃ち、それを確実に迎撃するシナリオでした。
ところが、ロシアや中国が核戦力の増強に取り組み、飽和攻撃の可能性が再浮上すると、GBIのような高価・高性能兵器では対抗できず、もっと低コストで数をそろえやすく、使いやすい手段が求められます。
そこで、アメリカでは次世代の迎撃ミサイル、NGI(Next Generation Interceptor)の開発が進み、衛星群や他のシステムと統合しながら、「ゴールデン・ドーム」に組み込むつもりです。
GBIの歴史を改めてふり返ると、限定的な核の脅威には対処できたものの、本格的な核戦争には対応しきれず、高コストにともなう絶対数の不足が課題でした。
されど、培ってきたミッドコース迎撃の技術、統合運用に向けた経験は今後も役立ち、次世代の基盤に活用する予定です。さらに、次の開発が順調に進むか分からない以上、GBIの役割と重要性は変わらず、しばらくは本土防衛の一翼を担い続けます。
現状、日本にはいらない
さて、日本でもGBIの導入を巡って、一時期は推す声があったものの、相対的な成功率の低さ、先述の高すぎる運用コスト、脅威の変化にともなって、いまでは聞かなくなりました。
もちろん、迎撃手段の数と幅をふまえると、THAADやGBIで多層的防空網を築き、「厚み」を持たすのは理想的でしょう。ただ、アメリカが次世代システムに進むなか、いまさらGBIを導入しても遅く、費用対効果も期待できません。
日本のBMDは対北朝鮮がメインとはいえ、隣国・中国が核戦力を増強する限り、アメリカ同様に大量攻撃も想定せねばならず、戦略のアップデートが欠かせません。
だからこそ、日本はゴールデン・ドーム構想に加わり、構築済みの二段構え体制を磨きながら、日米でのさらなる連携強化、統合運用を目指す姿勢です。
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