なぜ北朝鮮は核兵器を開発をするのか?

北朝鮮のミサイル 外国関連
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防衛動機に基づく合理的選択

北朝鮮のミサイル発射が常態化するなか、彼らがなぜ核兵器開発にこだわるのかについてはあまり深掘りされていません。

まず、北朝鮮の核開発は冷戦時代までさかのぼり、本格的な脅威として明らかになったのは冷戦後の1990年代になります。

そして、わざわざ国際社会を敵に回してまで作る理由は自国防衛。もっとはっきり言えば、金一族による支配体制を維持するためです。

そもそも、朝鮮戦争以降の北朝鮮はいつもアメリカとその同盟国(韓国と日本)を軍事的脅威に感じてきました。先に仕掛けたとはいえ、朝鮮戦争ではピョンヤンを落とされたあげく、中朝国境まで追い詰められました。

その後、中国の参戦でなんとか休戦まで持ち込み、戦後は中国やソ連の支援を受けながら復興を果たします。一応、再び南進して武力統一するつもりはあったものの、韓国には1970〜80年代に経済力で逆転されました。

こうなると武力統一は難しくなり、むしろアメリカに支援された韓国側が攻めてくる恐れがありました。そこで、韓国の首都・ソウルを長距離火砲群で狙い、800万とも言われるソウル市民を人質にします。

戦争再開となれば、いきなり大量の砲弾・ロケット弾が首都圏に降り注ぐため、韓国側からは仕掛けられず、いまも抑止している状態です。

ところが、この抑止は韓国にしか効かず、アメリカをけん制するには弾道ミサイルしかありません。

北朝鮮の日米間に対する牽制イメージ

こうしたを考えを持ち始めたなか、1990年にはソ連が韓国側と国交を結び、翌年にはソ連自体が崩壊してしまいます。

この衝撃が覚めやらぬうちに、1992年には韓国と中国が国交正常化を果たして、北朝鮮にさらなる打撃を与えました。このとき、中国との同盟は引きつづき維持されていましたが、韓国側と国交を結んだ彼らに大きな不信感を抱いたのは言うまでもありません。

こうして北朝鮮は後ろ盾を失い(少なくともそう感じた)、自力でアメリカと韓国を抑止せねばならなくなりました。本来であれば、経済力を高めて軍隊も近代化させる「富国強兵」が望ましく、中国もこの道を選択しています。

しかし、すでに北朝鮮経済は最低レベルまで落ち込み、アメリカどころか、韓国との国力差も広がる一方でした。

もはや追いつける展望はなく、仮に改革開放路線をとったとしても、その成果が現れるまでには時間がかかり、その間に現体制が限界を迎えたり、アメリカが攻めてくるかもしれません。

北朝鮮と韓国、ソ連、中国の関係図

限れた資源と時間で最大の安全保障を実現するにはどうすべきか。

その答えが核兵器だったわけです。

こうしてみると、北朝鮮が核開発を推し進めるのは、別に彼らが狂っているわけではなく、自分たちの国力で最大限の抑止力を獲得できるからです。

つまり、防衛的な動機に基づく、合理的選択ともいえます。

国内アピールに使える

さて、核兵器を持てば、小さな国力でもアメリカを抑止できるなか、北朝鮮にとっては別の使い道もあります。

そのひとつが、国内プロパガンダに使える点です。

北朝鮮国内では、核兵器は独立と強国の象徴とされており、アメリカと対等に渡り合える「力の根源」とみなされてきました。これは指導部の成果として支持を集めたり、その権力基盤を強化するうえで役立ちます。

北朝鮮の弾道ミサイル国威発揚にはちょうどいい

とりわけ、北朝鮮は歴史的経緯から「自主・自立・自衛」への思いが強く、金日成の時代から「主体思想(チュチェ思想)」として普及教育してきました。

昔からの強国に囲まれてきたがゆえに、このような思想にいたったわけですが、他者に依存することなく、自分たちの力だけで守れる点では、核兵器は最適手段なのです。

すなわち、核兵器は北朝鮮独自のイデオロギーとも相性がよく、独裁政権の求心力を高める結果になっています。

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