米潜水艦の主力武器
アメリカは約70隻の原子力潜水艦を持ち、世界中の海に潜ませていますが、その全てが「マーク48魚雷(Mk.48)」を運用中です。
これは米海軍の主力魚雷にあたり、1972年の初配備から半世紀が経っても、継続的な改良で現代に対応しました。
- 基本性能:Mk.48魚雷
| 重 量 | 約1.68t |
| 全 長 | 5.8m |
| 直 径 | 533mm |
| 速 力 | 55〜65ノット (時速100〜120km) |
| 射 程 | 38〜70km |
| 深 度 | 約800m |
| 弾 頭 | 高性能炸薬:293kg |
| 価 格 | 約7億円 |
Mk.48は先代のMk.37魚雷、旧式のMk.17魚雷を更新すべく、1960年代に開発された魚雷です。分類上は長魚雷にあたり、潜水艦から水上艦艇、あるいは敵に潜水艦に対して、攻撃を加えるための兵器です。
当時のアメリカ海軍といえば、ソ連潜水艦の急速な能力向上に悩み、魚雷の性能不足が指摘されていました。そこで、新たにMk.48の開発に取り組み、速力を55ノットに倍増させながら、高性能爆薬で威力を高めました。
その結果、1発で艦艇を行動不能に追い込み、相手が潜水艦であれば、そのまま撃沈できるほどです。
たとえ直撃せずとも、艦底下で爆発させると、大きな衝撃波と気泡の圧力を生み、船体を真っ二つにできます。これはバブルパルス現象と呼び、最も効果的な攻撃方法です。
Mk.48魚雷(出典:米海軍)
射程は38km以上ですが、あえて水中速度を落とせば、70kmまで伸びます。最大深度は非公表なれども、700〜800mと推測されており、対潜戦には申し分ありません。
また、母艦からの有線誘導に加えて、魚雷自身がソナーを使いながら、敵を捕捉する方式を併用しました。
母艦と魚雷のソナーだと、前者の方が能力が高く、有線誘導ではその強みを活かして、高い命中精度を期待できます。発射後は母艦とケーブルでつながり、相手が囮や欺瞞装置を展開しても、自律誘導よりは識別しやすく、人間の判断で軌道修正が可能です。
他方、魚雷自身が自律誘導する場合、母艦は回避運動に移行しやすく、即応性が高いといえるでしょう。したがって、しばらく有線誘導で向かわせたあと、途中でケーブルを切れば、自律誘導方式に切り替わり、両者の利点を併用できます。
何度も改良して対応
Mk.48の開発自体は古いものの、7回にわたって改良されたため、現在のタイプは性能が高く、初期型とは比べ物になりません。
たとえば、1980年代にはソ連原潜に合わせて、探知能力の飛躍、深海での安定性向上、妨害への耐性強化など、自らも進化を遂げてきました。高出力のアクティブ・ソナーを積み、遠距離で相手を発見したあと、より正確に識別できるようにしました。
一方、浅い沿岸海域は障害物が多く、音波が歪みやすいことから、従来のソナーでは精度が落ち、敵に「聖域」を与えてしまいます。
Mk.48魚雷(出典:米海軍)
それゆえ、1990年代には深海だけではなく、沿海域での作戦に対処するべく、誘導・制御機器を刷新しました。このとき、更新可能なシステムを組み込み、ソフトウェアをアップデートすれば、簡単に能力向上できるようにします。
2000年代に入ると、ロシア海軍が徐々に復活したり、中国海軍が急拡大したため、Mk.48は新型ソナーへの換装、送受信機能の更新を行い、沿岸部での追尾能力を引き上げました。
むろん、深海での能力は疎かにしておらず、引き続きその部分を維持しながら、沿海域での対処力を高めた形です。その進化の過程をふり返ると、当初は深海での性能を重視したあと、次第に焦点が沿海域に移り、いまは「二刀流」で双方を両立にしました。
Mk.48の変わらぬ信頼性
Mk/48は登場から半世紀が経つものの、アメリカ唯一の潜水艦発射型魚雷であり、さらなる能力向上の余地はあっても、わざわざ新型を開発する理由はなく、設計的には「完成」された状態です。
だからこそ、累計生産数は3,500発以上にのぼり、オーストラリア・ブラジル・オランダ・カナダも使っているほか、2020年には台湾も購入しました。
イラン艦艇の撃沈(出典:米海軍)
そして、2026年に対イラン戦争が起きると、スリランカ沖で米潜水艦がMk.48を撃ち、イランのフリゲート艦を1発で沈めます。先述のバブルパルス現象を狙い、艦尾付近で水中爆発を起こしたところ、一撃で相手を真っ二つに割りました。
これは第二次世界大戦以降、米海軍が魚雷で撃沈した初の事例になり、原子力潜水艦の魚雷攻撃でいえば、1982年のフォークランド紛争以来です。
初めての「戦果」を受けて、Mk.48の威力は世界中に知れ渡り、米軍内で改めて評価されました。
最新型は高性能部品の多用、物価高騰の影響により、約7億円するとはいえ、その堅実な信頼性は変わらず、今後も定期的に改良はすれども、置き換えるつもりはありません。


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