欠かせない人材確保
こうした経緯をふまえて、まずは中核となるサイバー防衛隊を2023年度中に2,200人まで拡充しつつ、最終的に4,000人体制を目指します。
各地から電波や通信に明るい人員をかき集めて再編するつもりですが、サイバー人材を確保するのは厳しい状況です。
もちろん、サイバー教育を通じた育成にも注力すべく、各種学校にサイバー関連の教育機材を導入したり、防衛大学校の情報工学科を「サイバー・情報工学科」に改編する予定です。
しかしながら、これら教育成果は時間がかかるうえ、そもそも適性がある自衛官もそう多くありません。
対する中国軍は17.5万人規模のサイバー部隊を持ち、攻撃専門だけに限ってもその数は3万人にのぼります。あの北朝鮮でさえ、約7,000人のサイバー部隊を運用している事実を考えると、日本はかなり出遅れている格好です。
当然ながら、部隊内の採用と育成だけでは足りず、「ホワイト・ハッカー」も含めた民間人材に頼らざるをえません。
そこで、防衛省は高度な専門知識を持つ人材を「特定任期付自衛官」として採用する方針を決めました。これは任期付で民間から出向する形になりますが、通常の自衛官・事務官よりは高待遇を提示するようです。
ところが、こうした高度なサイバー人材は引く手あまたなうえ、民間市場でも年収2,000〜3,000万クラスで待遇されているケースが多く、最高年収が2,500万円の場所をあえて選ぶ理由は少ないように思えます。
一部では「薄給でも国防にモチベーションを持って来てくれるかも」という淡い期待が見受けられますが、これは国主導のやりがい搾取にすぎません。
反撃、インフラ防衛はできず?
サイバー防衛隊はサイバー攻撃に対する防御はできるものの、攻撃元への反撃は「防衛出動」が必要となります。しかし、サイバー戦では悠長に防衛出動を待っている暇などなく、現行法では「能動的サイバー防御」、いわゆる反撃は事実上不可能です。
さらに気になるのが、電力系統や民間通信などの重要インフラが防護対象になっていない点。戦争になれば、相手は当然ながらインフラも狙ってくるので、アメリカのようにサイバー面でも軍隊が重要インフラを守らねばなりません。
経済安全保障の強化を目指す政府は、サイバー攻撃を防ぐための「事前審査制度」の対象を広げて重要インフラも防護対象にする方針ですが、その動きは遅く、法的制約で反撃できない状態では効果も限られるでしょう。
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