イタリア・チェンタウロ戦闘偵察車が果たす役割とその価格

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駆けつける装甲戦闘車

イタリアは南北に細長い国土を守るべく、北部にアリエテ戦車を使う装甲部隊を置き、南部は機動力の高い軽装甲部隊に任せています。もし敵が南部に上陸したら、北部の装甲部隊が来るまで時間を稼ぎ、到着後は反撃に転じる方針です。

このとき、「B1・チェンタウロ」は高速道路・国道で南部に急ぎ、遅滞戦闘を支援する戦闘偵察車になります。

まず、チェンタウロの名はギリシア神話を由来に持ち、上半身が人間で下半身が馬の「ケンタウロス」のことです。名前の由来から分かるとおり、戦車と歩兵戦闘車の間にある装輪戦車として、火力支援では「救急車」に近い役目を果たします。

主武装には105mmライフル砲を使い、敵の橋頭堡や陣地を攻撃できるほか、貫通力の高い対戦車砲弾など、全てのNATO標準弾に対応しました。

目標を正確に補足するべく、レーザー測距機・赤外線暗視装置がそろい、射撃管制装置はアリエテ戦車と同じものを搭載しています。

射撃するチェンタウロ（出典：イタリア軍）

一方、機動性優先の代償として装甲は薄く、全体では12.7mm〜14.5mm弾の重機関銃、正面装甲は25mm弾にギリ耐えるレベルです。これは本格的な交戦では心許なく、砲弾の破片さえ貫通する危険性があります。

海外派遣用の増加装甲があるとはいえ、根本的な解決にはなっておらず、あくまで機動火力の役割を務める以上、火力の応酬における防御力は期待できません。

それでも、空気清浄機によるNBC防護力（放射能・生物・化学）、煙幕展開機とレーザー警報装置を持ち、装甲車としては最低限以上の防御力を確保しました。

装甲防護力を犠牲にした代わり、チェンタウロは圧倒的な高機動力を誇り、重量25トンでありながら、時速108kmで舗装道路を走行可能です。

8つの全輪駆動式タイヤとともに、高性能な油圧式サスペンションを組み込み、低燃費のエンジンは舗装道路を使えば、その行動範囲を最大800kmまで伸ばせます。

基本的に舗装道路を意識するなか、タイヤの空気圧を車内から調整できるなど、不整地も想定した設計になりました。

チェンタウロ（出典：イタリア軍）

なお、弾薬用の空間には最大4名が乗り組み、弾薬消費後の状況に限るとはいえ、「片道の歩兵戦闘車」としても使えるそうです。

ここまでをまとめると、現代戦車（120mm砲）の火力には敵わないものの、軽戦車としては申し分ありません。しかし、防御力の弱さから敵の戦車どころか、歩兵戦闘車とも撃ち合うのが難しく、機動力を活かした火力支援、一撃離脱の奇襲が基本になります。

南部方面の即応増援になるべく、チェンタウロは1991年に部隊配備が始まり、現在までに400両近くが生産されました。

このうち、イタリア本国での運用は約260両にとどまり、それ以外はヨルダン・スペイン・オマーンが使っています。ちなみに、イタリア軍の車両はイラク戦争に加えて、ソマリアの国連治安維持活動に送り込み、小規模ながらも実戦を経験済みです。

自走砲型（155mm榴弾砲）、自走対空砲型、指揮通信型など、あらゆる派生型が登場するなか、主武装を120mm滑腔砲に変えながら、防御力を強化した「チェンタウロ2」が開発されました。

チェンタウロ2は再設計・刷新を行い、モジュール装甲と高強度鉄鋼で脆弱性の克服に取り組み、V字型の車底で地雷や即席爆弾（IED）への抗堪性を高めました。

後継の「チェンタウロ2」（出典：イタリア軍）

このような防御力強化にもかかわらず、砲塔の軽量化、新型エンジン・変速機により、自慢の高機動力をほとんど維持しました。その快速ぶりは従来と変わらず、時速105kmで舗装路を走り、引きつづき緊急の火力支援を担います。

さらに、チェンタウロ2は自動装填装置で乗員が3名に減り、最新の電子光学装置と照準システム、指揮通信機能を使いながら、高い命中精度と連携能力を獲得しました。