堅実な性能と高い柔軟性
ドイツは西側初の本格的な歩兵戦闘車を作り、いまもその系譜を受け継いだ「プーマ」が開発されました。
しかしながら、このプーマは値段が高く、NATO演習で不具合を起こすなど、信頼面における不安が否めません。
そこで、ドイツの大手軍需企業「ラインメタル」が提案しているのが、より安くて信頼性のある「リンクス・シリーズ」になります。
- 基本性能:KF41リンクス歩兵戦闘車
重 量 | 44t |
全 長 | 7.22m |
全 幅 | 3.6m |
全 高 | 3.3m |
乗 員 | 3名+兵員8名 |
速 度 | 時速70km |
行動距離 | 約500km |
兵 装 | 30mm/35mm機関砲×1 7.62mm機関銃×1 対戦車ミサイル、ドローンなどを追加可能 |
価 格 | 1両あたり約億円 |
リンクス自体は歩兵戦闘車型の「KF41」を基本としつつ、軽量モデル(KF31)や軽戦車型、戦闘支援型などのファミリー化を目指したものです。
基本設計は従来車両をふまえながらも、砲塔や兵員用のスペースはモジュール化させており、他の派生型へ改装できるようになっています。
主武装には30mmまたは35mm機関砲を持ち、必要に応じて対戦車ミサイルやドローン発射器、遠隔操作式の12.7mm機関銃を搭載可能です。このあたりはモジュール設計の利点を活かせば、輸出先の要望にしたがって柔軟に変えられます。
一方、その防御力は機関銃弾や砲弾の破片はもちろん、対戦車兵器にも耐えられるほか、対NBC兵器の空気清浄システムや内張りの装甲膜、二重床で乗員を保護しました。
こうした基本防護に加えて、対装甲戦や都市戦闘などの防御キットが用意されており、自らミサイルや砲弾を撃ち落とすアクティブ防護システムも選べます。
開発コスト・リスクの低減
総合的にみれば、歩兵戦闘車としては抜きん出てはおらず、むしろ堅実な性能で信頼性を優先しました。
そして、いろいろ装備を変えられる柔軟性を持ち、指揮車両や戦闘支援型、偵察戦闘、回収・修理、弾薬輸送などの派生型がたくさんあるのも魅力です。
特に「リンクス120」は軽戦車版でありながら、120mm砲を搭載したことにより、主力戦車に劣らない火力を手に入れました。
ひとつのベースから多くのタイプが生まれたわけですが、これは開発時間とコストを節約するとともに、整備・補給面での効率化にもつながっています。
しかも、一部のパーツを既存兵器と共通化させたため、さらなるコスト削減と目指していた信頼性を実現しました。新兵器として冒険するのではなく、すでに実績のある技術で開発リスクを下げたわけです。
ところが、リンクス自体はドイツ本国では採用されておらず、現時点ではハンガリーとギリシャがそれぞれ200両以上を購入しています。ほかにも、アメリカやルーマニア、そしてロシアと戦うウクライナが検討しており、ラインメタル社としては輸出を通して一定の地位を築きたいようです。
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