アメリカの実験無人水上艦「デファイアント」が目指す性能

実験無人水上艦 アメリカ
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小さいが、高い柔軟性

すでにアメリカで無人艦隊の試験運用が進むなか、新たな無人水上艦「USX-1デファイアント」が登場しました。あくまで実験目的とはいえ、新型無人艦として数ヶ月の試験航海に挑み、米海軍が目指す無人艦隊構想において、新たな扉を開くと期待されています。

その開発は国防総省の研究機関(DARPA)が担い、艦名の「Defiant」は実験艦にふさわしく、日本語で「挑戦的」という意味を持ちます。

  • 基本性能:無人水上艦「デファイアント」
排水量 約240t
全 長 54m
速 力 15ノット以上(時速28km)
兵 装 コンテナ型のミサイル発射機
建造費 約4億円(兵装なし)

長期にわたる無人航行を実証すべく、デファイアントには人間は乗り込まず、あるいは最低限の監視役だけを置き、ハイブリッド式の機関と高出力電池で動く仕組みです。

通常の船と違って艦橋がなく、代わりに多数のアンテナ・センサーを組み込み、その自律航行能力を支えています。このように240トンと小型ながらも、高い通信性能を確保しており、世界のどこにいても運用可能です。

なお、前後には兵装用のスペースがあって、それぞれミサイル発射機を設置できます。これは垂直発射基(VLS)に加えて、斜めに発射する「ADL」という兵器になり、どちらもコンテナ型を採用したところ、短時間で換装できるようになりました。

それゆえ、対空と対艦、対地ミサイルを使えるほか、対潜ロケットも装備できるなど、任務に応じて選べます。コンテナ兵器で換装しながら、高い柔軟性を目指すといえば、沿海域戦闘艦(LCS)があげられますが、それの小型・無人版ともいえそうです。

進む無人艦隊の計画

さて、デファイアントはDARPA主導の計画とはいえ、アメリカ全体で行われている無人化構想の一部にすぎず、米海軍では無人艦隊すら運用されています。

米海軍の無人艦隊は2021年に試験運用が始まり、2023年には「レンジャー」などの無人艦が太平洋横断に成功しました。DARPAも計画の一部に加わり、洋上で給油実験を行うなど、無人艦のより実践的な運用を試しました。

実験無人水上艦兵装なしのデファイアント(出典:DARPA)

DARPAにせよ、米海軍にせよ、その目指すところは完全な自律運用であって、いわば人の手を必要としない船です。有人艦と比べた場合、無人艦はサイズを抑えながら、安く運用できるうえ、人的損害のリスクがありません。

したがって、空を飛ぶドローンと同じく、今後は海でも兵器の無人化が進み、投入される状況次第では大きな脅威になります。すでにウクライナが水上ドローンを使い、ロシアの黒海艦隊に損害を与えるなか、アメリカもその研究開発を加速させています。

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