自衛隊が試験中!輸送ドローンの「Chaparral」とは?

陸上自衛隊
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離島間の補給に

日本は多くの離島を抱える以上、これらを昼夜問わず監視したり、敵の侵入から守らねばならず、各島に自衛隊を配置してきました。そして、中国の海洋進出にともなって、日本では離島防衛が急務になり、そのための能力も着々と整備中です。

しかし、離島では兵站能力の確保が難しく、港湾・空港の機能が限られている場合、物資の安定補給に苦労してきました。

そこで、陸上自衛隊では離島間の輸送に使うべく、輸送用のドローンに興味を抱き、アメリカで「Chaparral(チャパラル)」を検証中です。

機体サイズは全長5.88m、翼幅8.01mで、ペイロード(積載量)は300ポンド(約136kg)。巡航速度は125ノット(約231.5km/h)で、航続距離は300マイル(約483km)というスペックです

  • 基本性能:Chaparral無人輸送機
全 長 5.88m
全 幅 8m
速 度 時速230km
航続距離 480〜500km
輸送能力 最大140kg

チャパラルはアメリカのエルロイ・エア社がつくり、垂直離着陸ができる可能な中型の無人機です。それゆえ、滑走路がなくても運用できるほか、大掛かりな設備と機材は必要ありません。

さらなる省人化を進めるべく、地上ロボットの活用も目指しており、最低1名が全体を監視しながら、運用・整備を無人化させる狙いです。もし実現すれば、複数機の運用がわずか数人で済み、人手不足の自衛隊には最適でしょう。

輸送時は機体の下にポッドを着けますが、これは荷物の形状と大きさで変わり、最大で約140kgの貨物を搭載可能です。

食料と医薬品に加えて、一部機材や小銃の弾薬ぐらいは運び、本土から離島への補給はともかく、離島同士の小規模空輸には役立ちます。

まずは輸送機で大きな島に物資を送り込み、そこから無人機で小さな離島に運んだり、離島間の日常的なやり取り、あるいは緊急空輸に使う感じです。

ハイブリッドの推進機関

チャパラルはガスタービン・エンジンと蓄電池の両方を使い、前者でバッテリーを充電しながら、合計12個のモーターを電気で動かします。

ただし、12個のうち8個は離陸時にしか使わず、実際は残り4つで飛行する形です。主に4個のモーターで駆動するものの、電動式のローターは騒音が少なく、回転(動作)の効率化も実現しました。

いずれにせよ、ハイブリッド式の推進機関を持ち、バッテリーだけで飛ぶ無人機と比べて、長い航続距離と飛行時間を誇ります。積載する貨物次第とはいえ、最大で500km近い距離を飛び、離島間空輸には問題ありません。

しかも、エンジンでバッテリーを充電する限り、ガスタービン用の燃料さえあればよく、先ほどの垂直離着陸能力とともに、運用面での柔軟性を確保しました。

そんなチャパラルはアメリカ空軍、アメリカ海兵隊の目にも留まり、同じくテスト飛行を繰り返しています。

すでに1,000機以上の注文が入り、米軍が正式に導入するとなれば、日米の相互運用性を高めるべく、自衛隊も続く可能性が高いでしょう。

台湾有事で日米が共同対処する以上、装備とシステムの共通化を図り、一定の互換性を確立しておくべきです。

また、日本は太平洋戦争で補給線を確保できず、離島の守備隊を孤立させながら、米軍による各個撃破を許しました。この苦い教訓に基づくと、本土〜離島間の兵站線は言わずもがな、離島間の連絡線も失ってはならず、ドローンで補給能力を補完すべきです。

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