従来の護衛隊群を廃止
海上自衛隊では主な戦闘艦艇を「護衛艦」と呼び、その艦隊は「護衛隊群」と呼称します。そして、長らく4個護衛隊群の体制が続き、機動戦力として運用してきました。
1個護衛隊群は2個護衛隊から成り、1個護衛隊は4隻の護衛艦で編成されます。したがって、1個護衛隊群には計8隻が付き、4個護衛隊群ともなれば、総勢32隻の大戦力でした。
少し複雑ですが、護衛隊群は沿岸警備の部隊、掃海部隊とともに「護衛艦隊」を組み、旧海軍の連合艦隊に近い存在でした。
護衛隊群+沿岸警備部隊(2桁護衛隊)+掃海部隊=護衛艦隊のイメージです。
海自が保有する計54隻の護衛艦のうち、32隻が配備されていた点を考えると、護衛隊群は「主力艦隊」でした。交代や整備を加味しても、常に1〜2個は出動可能な状態にあり、世界的には充実した艦隊戦力です。
ところが、安全保障情勢の悪化を受けて、自衛隊では大規模な組織改編が進み、護衛隊群・護衛艦隊が廃止されました。
3個水上戦隊に集約
2024年発表の新構想によると、護衛艦隊は「水上艦隊」に変わり、その下に「水上戦群」「水陸両用戦・機雷戦群」「哨戒防備群」を置きました。
特筆すべきは水上艦隊の発足ですが、ここでは8個護衛隊が9個水上戦隊になり、4個護衛隊群を3つの水上戦群に再編しました。50年以上ぶりの大変革とはいえ、水上戦群にはイージス艦や汎用護衛艦が集まり、引き続き主戦力として活動します。
4個護衛隊群から3個水上戦隊に減り、一見すると戦力ダウンに見えるも、護衛艦の定数は変わっておらず、あくまで艦隊編成の変更にすぎません。むしろ、1つの水上戦群には12隻をあてがい、出動できる数を増やしながら、総勢37隻の大所帯になりました。
他方、「さくら型」哨戒艦はもちろん、「もがみ型」フリゲートも哨戒防備群に、掃海艦艇は水陸両用戦・機雷戦群に移りました。
改編をまとめると、下のような形になります。
- 護衛艦隊→水上艦隊
- 護衛隊群→水上戦隊
- 2桁護衛隊→哨戒防備群、水陸両用戦・機雷戦群
- 掃海部隊→水陸両用戦・機雷戦群
この再編は指揮系統の一元化を図り、部隊運用の合理化を目指したもの。柔軟に戦力を組み換えたり、航空機・潜水艦などを組み込み、統合運用を意識した再編ですが、そのために各部隊の戦力密度を高めました。
戦力ダウンではなく、戦力集中の再編とはいえ、編成上は「部隊」が1つ減っており、その分の司令部が削減されるはずです。つまり、横須賀・佐世保・呉・舞鶴のうち、どれかの司令部を廃止せねばなりません。
どうやって戦力を回す?
ここで気になるのが、「ローテーションをどうするのか」という問題。
前述のとおり、4個護衛隊群の時代ならば、整備・休息・出動を交代しながら、1〜2個隊群は稼働状態にありました。また、同じ護衛隊群内で離脱艦が出ても、残り3つの隊群から補充しています。
3つの水上戦群に変わると、各戦群の中での交代はともかく、「群」単位ではローテーションが厳しくなり、どのように維持・管理するのか疑問です。
さらに、従来型の護衛隊群を詳しく見ると、ヘリコプター護衛艦(DDH)が1隻、イージス艦が2隻、汎用護衛艦が5隻の編成でした。
最初のDDHは「ひゅうが型」「いずも型」など、4隻のヘリ空母を指しており、イージス艦の数も8隻であることから、1個隊群に均等配置できていました。
これを3つの水上戦群に集約する場合、どのように割り振るのか。
まず、イージス艦は新たに12隻体制になり、1個水上戦群あたり4隻になる計算です。この数ならば、1隻が何らかの事情で離脱しても、同じ戦群内でやり繰りできます。
一方、DDHは4隻しかなく、うち2隻は事実上の軽空母です。
公表された初期編成によると、「いずも」「かが」「ひゅうが」は水上戦群の旗艦に、「いせ」は通信・指揮能力を強化すべく、水陸両用戦・機雷戦群に配備されました。
軽空母はF-35B戦闘機を運用するため、こちらは水上戦群に配置しながら、ヘリ空母を水陸両用戦・機雷戦群に送ったわけです。
されど、「群」単位での交代状況をふまえると、そのときに出動可能なDDHがおらず、作戦上は不都合になるリスクがあります。
これ以上DDH(ヘリ空母)を増やす計画、あるいは余裕があるのか。続報次第で判明するとはいえ、海自がどう考えているのか気になります。
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