陸上自衛隊の衛星単一通信可搬局装置が誇る性能とは?

陸上自衛隊
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野外で宇宙を経由して通信

戦場において「通信」が途絶えれば、部隊間の連携がほとんど取れず、作戦は失敗するでしょう。指揮官が前線の状況を把握できず、部隊がその命令を受け取れないと、組織として機能しなくなるからです。

ところが、野外では通信手段の確保が難しく、それは技術が進歩した現在も変わりません。状況次第では無線機はつながらず、険しい地形では伝令もひと苦労です。

そこで、野外での通信能力を強化するべく、陸上自衛隊では特殊な通信車両を持ち込み、それが「衛星単一通信可搬局装置(JMRC-C4)」。

  • 基本性能:衛星単一通信可搬局装置
重 量 約1.6トン
全 長 4.8m
全 幅 2.2m
全 高 4.5m
運 用 高機動車
周波数 Xバンド
価 格 約5,000万円

これは通信システムのひとつにあたり、主にシステム通信科に配備しながら、師団・旅団の衛星通信を支えてきました。その名が示すとおり、人工衛星を経由して通信を行い、野外における中継拠点として活躍します。

ちなみに、「可搬 (かはん) 」とは持ち運べる意味。あまり馴染みがないものの、USBを「可搬記憶媒体」と呼ぶなど、自衛隊ではよく使う言葉です。

そんな持ち運べる衛星通信装置ですが、パラボラ・アンテナが付いており、高機動車でそのまま移動しながら、日本全国のどこにでも展開します。無線通信は山や建物が障害になり、遠距離では届かないのに対して、衛星通信は宇宙を経由するため、地形に関係なく通信可能です。

高性能なXバンド通信を使いながら、主に現場の連隊と上級司令部をつなぎ、全体の通信ネットワークで見ると、重要な結節点にあたります。

衛星を中継して音声・データ通信を行うわけですが、アニメ映画の「サマーウォーズ」でも登場しました。陣内理一(自衛官)が松本駐屯地から借り、ラブマシーンとの対決を通信面で支えたり、衛星の落下予想地点を確認しています。ただ、劇中の車両はXバンドではなく、大容量のミリ波通信を使っており、搭載装置の形状も異なりますが。

それでも、「衛星単一通信可搬局装置」と言われても、一般には何もピンと来ませんが、サマーウォーズに出てきた自衛隊車両と言えば、なんとなくのイメージは付くでしょう。

災害派遣での活躍と後継

衛星通信可搬局装置は戦場だけではなく、災害派遣でその真価を発揮してきました。災害で通信インフラが打撃を受けても、移動展開式で衛星経由の通信ならば、現地に通信能力を届けられます。

たとえば、東日本大震災では通信設備がダウンするなか、被災地にいる部隊と後方の司令部を結び、状況の把握と初動対応で活躍しました。そのまま現地に乗り込み、通信拠点になれるからこそ、非常時に重宝される存在です。

出典:陸上自衛隊

現在も各地で運用中とはいえ、その調達は1996年に始まったあと、2010年には終了しました。その後、2014年には後継の配備が始まり(JGBY-B1)、同じ衛星通信システムといえども、新しい周波数の使用と高速化にともなって、大容量の通信が可能になったほか、画像・動画の送受信が円滑になりました。

現代戦ではリアルタイムの映像通信が欠かせず、特にFPVドローンの必要性を考えると、屋外での大容量の通信能力は必須です。

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