旧式戦車の車体を再利用
ロシア=ウクライナ戦争がこう着状態になるなか、双方とも互いの防衛線を突破できておらず、特に地雷原がその効果を改めて発揮しています。
自爆ドローンの戦果が目立つとはいえ、地雷による損害もかなり多く、ウクライナが行った2023年の夏季攻勢も、地雷原を敷いた防衛線の前に失敗しました。貴重なレオパルト2戦車なども失い、正面装備の充実だけではなく、地雷処理車両の必要性が浮き彫りになった形です。
こうした現実を受けて、旧式の「ケイラー」を長らく使ってきたドイツは、2024年に新型の「ケイラーNG」を登場させました。
- 基本性能:ケイラーNG
重 量 | 63t |
全 長 | 13.5m |
全 幅 | 5.6m |
全 高 | 3.5m |
乗 員 | 2名 |
速 度 | 時速65km |
兵 装 | 7.62mm機関銃×1(遠隔操作式) |
もともと、ケイラーはM48パットン戦車の車体を流用したもので、火砲で有名なラインメタルが1997年に作りました。その車体には地雷ごと地面を掘り起こす鋤(すき)、そして大きなローラーとそれに連動する24本のチェーンがあります。
ローラーで圧力を加えて地雷を起爆させたり、重さ25kgの鉄をつけたチェーンを回転させながら、物理的衝撃で破壊する仕組みです。ほかにも、遠隔操作式のアームで爆破処理できるなど、対人から対戦車までの各地雷に対応しました。
爆破処理するケイラー(出典:ドイツ軍)
その処理速度は地雷の埋設深度で変わるものの、最短10分で長さ120m、幅4.7mの通路を切り開き、車体後部の装置で安全地帯を示す目印をつけながら進みます。
ところで、似たような装備として、戦車の前部に着ける「処理ローラー」というのがあります。これは戦車にそのまま装着できる一方、ある程度の準備時間が必要となり、処理範囲も専用車両よりは狭いです。
また、失敗すれば戦車も失うため、地雷原処理車を投入できるならば、そちらを使った方が効果的でしょう。
ただ、ケイラーの配備数はわずか24両にとどまり、そのうちは4両はウクライナに供与されました。ウクライナも貴重な4両を失うわけにはいかず、実戦ではむしろ心理的に投入しづらく、敵にも高価値目標として狙われるかもしれません。
柔軟性を高めた新カイラー
一方、ケイラーNGはウクライナでの教訓に基づき、追加装甲や新しい煙幕展開器の導入、エンジンの出力強化が図られました。車体もレオパルト2をベースにしたものになり、最高速度が15kmアップしたほか、戦場での機動性・整備性もよくなりました。
ケイラーNG(出典:ラインメタル社)
処理方法については、従来と同じ回転チェーンを使いながらも、新たに560kgの処理爆薬を持ち、わずか1分足らずで長さ160m、幅9mの通路を確保できます。また、磁気反応型の地雷に対処すべく、磁気発生装置も搭載しており、旧ケイラーよりは対応範囲が広がりました。
いまのところ、その配備数は不明なものの、地雷原処理者の重要性が再認識されたことを考えると、少なくとも24両よりは多くなるでしょう。
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